ソーシャルワークの概念 誰もが暮らしやすい環境づくりに向けて

斉藤みちる


ソーシャルワークの概念

 

ソーシャルワークとは、日々の生活に何らかの困りごとを抱える人々にかかわる社会援助の活動を総称して表す言葉です。ソーシャルワーカーの藤田孝典さんなどは注目を浴びていますね。今回はソーシャルワークの概念にスポットを当てて解説します。

 

定義

ソーシャルワークは相談援助を基本とする幅広い支援を表しています。日本では「相談」は話を聞いてもらうことという心象があります。相談が地域や社会まで視野に入れた支援であるということは想像しづらいかもしれませんね。

 

「国際ソーシャルワーカー連盟」(IFSW)が2000年に示した定義をみてみましょう。

 

国際ソーシャルワーカー連盟 ソーシャルワークの定義

 ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における。問題解決を図り、人々のエンパワーメントと解放を促がしていく。ソーシャルワークは人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基礎である。

 

 

これによれば、ソーシャルワークとは人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指し、生活上の問題を解決していく過程で個々の人が自己実現し、意義ある人生をおくれるようにあらゆる支援をすることです。それだけにとどまらず、よりよい社会の実現のため、人権の尊重と社会正義を原理として社会変革を進めていくことも含んでいます。専門職としてのソーシャルワークが焦点を置くのは、問題解決と変革です。一人の人間への支援には、地域社会や社会全体の変革にもつながる意味が込められているのです。

 

2000年以前の定義にも全米ソーシャルワーカー協会による二つの定義(1958年、1973年)日本学術会議の社会福祉・社会保障研究連絡委員会報告の定義 平成15年(2003年)などがあり、個人と社会の両方に働きかけることによって人間と環境の間に起こる生活困難を解決するという点では、これらの定義は共通しています。

 

役割と機能

ソーシャルワークの役割は、人間らしく生きたいと願う人が直面している課題を、人間と社会環境との相互の接触面に生起(せいき)するものと捉え、援助関係を築きつつ相談を進め、意図的な介入を通じて利用者の力を引き出しながら、解決に必要とされる幅広い支援を組み立て、その実施を通じて社会全体の改善をも図ることをめざすことです。

 

ソーシャルワークを取り巻く環境や役割は、ソーシャルワークが必要とされる範囲の拡大や問題の複雑化、社会福祉基礎構造改革以降の契約制度によるサービス利用などと共に変化し、今日に至っています。

 

我が国の場合、福祉サービスの利用における契約制度の導入がソーシャルワークの必要性を増大させ、機能を変化させています。利用者が何を解決したいと望んでいるかを的確に把握します。そしてサービス利用が有用であれば、利用者の意思で複数の選択肢から適切なものを選び、契約し、サービスを利用するという自己決定に至る過程での支援を行っていきます。利用者が正しい情報を得られるようにしたり、選択を納得して行えるように支援し、何よりも自身の生活に対して能動的に向き合う力を高めていきます。

 

利用者の判断能力が不十分な場合には、選択を支えたり、不利益にならぬよう権利を守る代弁機能(アドボカシー)や権利擁護機能が重要になります。

 

また、複雑化して解決困難な事例では、既存の制度やサービスの活用が必ずしも適合しないような場合も多く、積極的に問題解決を促進する機能も必要となります。

 

援助が必要な人々が地域社会の生活基盤である小地域で生活しやすくなるよう、地域社会すなわち環境に働きかける機能や、さらには地域住民が主体的に支援者となり、地域社会の向上のために活動できるよう促進する機能が必要とされます。小地域の変容をうながすにはグループを活用した支援(グループワーク)が有効な場合が多く、必要に応じてそうした支援方法も取り入れています。

 

さらに、解決困難な問題に対しては、必要と思われる制度改革や新しいサービスの構築などを提言していく機能や、そのための運動(ソーシャル・アクション)の機能も含まれつつあります。

 

ソーシャルワークは個人を対象とする相談援助にとどまらない広がりある支援を通じて、よりよい個人の生活と社会の進展を生み出していくバイタリティにあふれた実践だと理解しましょう。

 

構成要素

ソーシャルワークを構成する要素は、価値、知識、技術ならびに目的と権限の委任です。人間の尊厳と権利の尊重と社会正義に、価値の基盤を置いています。

 

この価値のうえに人間と環境の関係を理解するための多様な知識があります。これは社会科学、自然科学など諸科学の幅広い知識や、人間理解を深めるために役立つ種々の分野への関心に基づく知識を意味しています。そして、それらのうえに変容と成長を促す介入の技術や技法を含む技術が活用されていくことになります。

 

価値、知識、技術を根底として、個々人におけるより良い暮らしやコミュニティ・社会の構築などの目的に向けて援助活動が展開されます。

 

権限の委任とは、ソーシャルワークの実施主体である国や地方自治体のような、公的な機関や職能団体などによる承認を意味します。つまり、ソーシャルワーカーは社会に承認された存在であり、個々人の暮らしや内面に介入する権限を与えられた専門職なのです。

 

援助を行う

我が国では「ソーシャルワーク」やその実践者である「ソーシャルワーカー」は人々の生活に関する相談援助の仕事をしています。一般にはあまり知られていませんが、病院や福祉施設、学校などで働いており、社会福祉の分野に限らず、司法などの分野でもソーシャルワークの実施が求められています。

 

常日頃、社会生活上の困難を解決するための相談や援助は、家族や、個人的に信頼できる身近な知人、友人間などで行われています。ソーシャルワーカーは、より有効な相談援助を行う専門的な知識と技術を駆使し、困難を抱える人々(次に説明します)の話に耳を傾け、困難の状況を把握し、解決に向けて働きかけ、すなわち変化を引き起こす介入を行います。

 

困難を抱える人々とは、いじめという犯罪に巻き込まれる子供、暴力に苦しむ女性、貧困な若者等、困難な状況に置かれている人々。

 

困難を抱える人々には「ケース」「クライエント」「利用者」などの呼び方があります。ケースというと事例として扱うことを示し、クライエントというと支援を必要とする人という意味に加え、治療の対象といった印象が強くなります。利用者は今日、福祉の現場で一般的に用いられています。相談援助サービスも含むサービスの利用者を示す意味合いが強くなります。

 

介入といっても、相手をコントロールするという意味ではなく、その人が自らの変化を生み出す過程に関わるという意味です。

 

たとえば、独り暮らしの高齢者が、体の不自由さがあっても地域で暮らすことを希望しているという事例を考えてみましょう。ソーシャルワーカーは、その方の不安や希望を十分に聞きながら、本人自身がこの課題に対処する力を発揮できるようにかかわりを深めていきます。決して指示するのではなく、本人の生活や感情の流れに沿って、たとえば介護保険制度の活用による通所介護(デイサービス)への通所など、解決のための方法を自ら選び取って地域での生活を希望通りに継続できるよう支援していきます。

 

また、利用者を制度に結び付ける過程では、家族との関係調整も行います。さらに地域の中で孤立せずに生活できるよう、地域内での人間関係の充実を支援します。

 

たとえば高齢者グループへの所属をうながすことや、近隣住民や民生委員に働きかけて緊急時に対応するチームを構成することなども考えられます。このように個人、家族、グループ、地域に焦点を当てながら援助の手段を計画し、実施していきます。大事なのはその過程で、どのように暮らしていきたいか、本人が自発的に希望を表明し、人生への展望をもてるようになることです。また、一定の目標まで達したら課題解決の過程で何がどのように変化し、残された課題は何か、援助に対する評価を行い、援助の効果や次の展開について振り返ることです。この過程を繰り返すことで利用者のもつ力がどの程度発揮され、それぞれの機関が課題解決に向けどのように取り組んだかがみえてくる専門職の重要な役割です。

 

ソーシャルワーカーは、一人ひとりの社会生活上の困難を抱える人々をダイレクトに支援する専門的な知識と技術を用います。施設や機関に所属しているほか、我が国ではまだ少ないのですが、自分で事務所を運営している人もいます。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn