生活保護制度の原理原則

斉藤みちる


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生活保護制度の基本的な考え方

①目的

生活保護法は、憲法25条に規定されている「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権保障の理念に基づいています。生活保護法の第1条では「生活に困窮するすべての国民」を対象として、その困窮の程度に応じた保護を行い、さらに「その自立を助長する」ことが目的とされる。

 

この「自立の助長」はたいへん重要なのです。といいますのは、困窮している状態への支援ばかりではなく、保護がなくても生活できるよう援助していくことが重視されているからです。

 

また、保護の申請や受給をする者の権利として、その保護をめぐる不服の申し立てが生活保護法で認められています。具体的には都道府県知事に対する審査請求とその結果に不服な場合の厚生労働大臣への再審査請求や行政訴訟です。

 

②無差別平等の原理

性別や身分はもちろんのこと、困窮に陥った理由によって保護の可否が決められたり、保護の金額が異なったりすることがあってはならないことが定めてあります。

 

生活保護の基本原理(生活保護法第1条~第2条)

 昭和25.5法律144

最終改正 平成20年法律42

第1章      総則

(この法律の目的)

第1条 この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

(無差別平等)

第2条 すべての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

(最低生活)

第3条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

(保護の捕捉性)

第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2 民法(昭和29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

3 前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

③最低生活保障の原理

生活保護法が保障する最低生活は「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」との考え方を示す原理です。これだけではあまりにも象徴的であるため批判的な見解もあります。

 

国が最低生活を金額で定めたものが、生活保護基準です。生活保護はこの基準に基づいて運用されています。

 

④捕捉性の原理

保護を希望する者については、まずその資産や労働能力、社会保険の給付や他の法律による手当や貸付制度など、活用できる能力や制度がないかどうかの確認が行われます。合わせて、扶養義務者(次に説明します)による扶養が可能かどうかについても調査が行われます。

 

※扶養義務者とは、扶養の義務を負う範囲のことで、民法第752条、第877条により、夫婦ならびに直系の血族および兄弟姉妹で社会通念上扶養の義務を負う者を絶対的扶養義務者、三親等内の親族を相対的扶養義務者としている。

 

要するに、生活保護を適用せずに生活できるかどうか、ミーンズテスト(資力調査)をもとに判断したのち、不足を補う範囲での保護の可否と程度が決定されます。生活保護は所得保障制度の「最後の砦」ということになります。

 

生活保護実施の原則

生活保護を運用するにあたり、次の原則があります。

    申請保護の原則

本人または扶養義務者、同居の親族に限って生活保護の申請を行うことができ、また、その申請がないかぎり、保護の手続きは開始されないという原則です。保護の申請は、あくまで本人の意思によるものでなければなりません。

②基準及び程度の原則

生活保護基準は、要保護者の年齢や世帯構成、所在地等の相違によって定められており、生活保護基準と収入との不足分をその要保護者に必要な生活保護費と認めて支給されます。

③必要即応の原則

年齢や世帯構成、健康状態等の実情に応じて個々に必要とされる保護を行うという原則です。

④世帯単位の原則

社会保障では、対象を世帯としてとらえる場合と個人としてとらえる場合とがあります。同一住宅に居住し、生計をひとつにしているものを同一世帯と認め、その同一世帯内で収入や資産の認定、保護費の算定を行うという原則です。やむを得ない場合に限られますが、同一世帯からある人を切り離して生活保護をする場合があります。これを世帯分離をよびます。


生活保護の原則

 申請保護の原則   (生活保護法 第7条)

基準及び程度の原則 (  同   第8条)

必要即応の原則   (  同   第9条)

世帯単位の原則   (  同   第10条)

生活保護の内容

生活保護には次に述べる8つの扶助があります。これらを世帯の実情に応じて組み合わせることによって、世帯ごとに生活保護費=金銭給付、および医療・役務等=現物給付、の保護の内容が決定されます。

 

生活保護の受給においては、冠婚葬祭の祝金などの特定の金銭を除いて、働いて得た収入や年金、仕送りなどの金額が保護費から差し引かれます。これを収入認定といいます。ただし、働いたことによる収入の場合は全額ではなく、被服などの必要経費を除いて収入認定しています。

①生活扶助

飲食物や被服費、光熱費、家具食器類など、個人や世帯単位で必要な費用を算定しています。そのほかに妊産婦加算、母子加算、障害者加算など、必要な部分を加算します。入院の場合には生活扶助として入院者日用品費が適用されます。

②教育扶助

義務教育の期間に限って必要な教科書その他学用品や、通学用品にかかる費用、学校給食費など義務教育にともなって必要な額が支給されます。

③住宅扶助

基準額の範囲で家賃や地代が支給されます。家賃などは地域差が著しく、地域別に基準額が定められています。

④医療扶助

現金給付ではなく、医療券を交付します。指定医療機関で医療を受けるという医療そのものを給付するという形をとっています。このような給付を、現金給付に対して現物支給というよび方をすることがあります。

⑤介護扶助

介護保険法による要介護者および要支援者に対する訪問介護等の居宅介護、施設介護を行います。医療補助同様、現物支給です。

⑥出産扶助、基準

施設や居宅での分娩にかかる費用で、定めらた範囲で金銭での支給となります。

 

またガーゼなどの衛生材料費が一定範囲で加算されるほか出産予定日等の急変や双生児を出産した時等の特別基準も定められています。

 

出産扶助基準

級地別     施設分ぺん   居宅分ぺん

1.2.3級地   202,000以内  204,000以内

⑦生業扶助

自立援助を目的として、事業の経営に必要な設備費、機械や器具の購入費、技能を習得するための授業料や教材費、就職に備えるための最低限の洋服や身のまわりの品の購入費などの給付が認められています。

⑧葬祭扶助

保護を受給している者が死亡した場合や困窮により葬祭が出来ない場合などに、必要な経費が支給されます。

 

保護施設

生活保護制度では居宅での保護を原則としていますが、保護施設や老人ホームなどに入所した状態で保護を行うこともできます。保護施設には、入所施設として救護施設と更生施設、利用施設として医療保護施設、授産施設、宿所提供施設の5種類があります。


生活保護制度を実施する機関

福祉事務所で、生活保護に関する相談や事務上の処理を行います。生活保護に関する主要な業務として、要保護者の相談に応じて指導や助言を行うほか、生活保護の申請から決定、保護開始後の生活状態の把握や指導などを行います。福祉事務所でのこの一連の業務に従事する職員はケースワーカーともよばれています。 

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn