児童虐待について

田中伸暁


女の子を児童虐待から救う男の人

 

無くならない児童虐待。平成12年に児童虐待防止法が施行されても、児童相談所に寄せられる虐待の相談件数は年々増加傾向にある。平成2年に1101件だった児童虐待の件数が、平成24年には66701件とおよそ6倍にも増えている。法律が施行されるだけでは子供たちは守れない。厚生労働省のホームページを参考に、児童虐待の現状と課題、今後の対策を探る。

 

児童虐待の種類

身体的虐待

・殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など

性的虐待

・子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など

ネグレクト

・家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など

心理的虐待

・言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV) など

 

以上が児童虐待の定義で、4種類に分類される。この中に挙げられている例は一般的なもので、個別具体的には千差万別の虐待が存在すると考えられる。

 

種類別

身体的虐待

23.57935.3%

性的虐待

1.4492.2%

ネグレクト

19.25028.9%

心理的虐待

22.42333.6%

 

身体的虐待が最も多く、同じくらいの割合で心理的虐待が多い。育児放棄を意味するネグレクトも3割近くと高い水準。性的虐待は2%とこの中では低い水準だが、性質上表面化しにくいので実際の被害件数は未知数である。身体的虐待などは体にあざが残るなど一目で虐待だと分かるケースがあるが、性的虐待などは本人が相談しづらい上に、周囲の人間が気付いたとしても触れづらい側面がある。

 

虐待者別

実母

38.224件(57.3%

実父

19.311件(29.0%

実父以外の父

4.1406.2%)

実母以外の母

5480.8%

その他(祖父母、伯父伯母など)

4.4786.7%

 

実母が6割近くと、実父の倍近い虐待を行っていることが分かる。育児は母親中心という傾向がまだ強いため、手をあげる回数も母親が多いということだろう。実父母による虐待が全体の86%。様々な要因があるにせよ、この事実は子供たちにとって想像以上に重い。

 

虐待を受けた子供の年齢構成別

♦03歳未満

12.05318.8%

♦3歳~学齢前

16.50524.7%

小学生

23.48835.2%

中学生

9.40414.0

高校生等

4.8017.2%

 

小学生未満で43%を占める。幼少期ほど虐待を受けたときのショックは大きく、成長した後も傷が深く残りやすいため、深刻だ。高校生以上でも7%を占め、長期にわたって虐待に苦しむ子供が多いことが窺える。

 

(以上は平成24年度児童相談所調べ)

 

児童虐待死亡件数

平成15.7.1~平成15.12.31

25

平成16.1.1~平成16.12.31

50

平成17.1.1~平成17.12.31

56

平成18.1.1~平成18.12.31

61

平成19.1.1~平成20.3.31

78

平成20.4.1~平成21.3.31

67

平成21.4.1~平成22.3.31

49

平成22.4.1~平成23.3.31

51

平成23.4.1~平成24.3.31

58

 

半年間の集計となった平成15年の統計を除けば、50人を切ったのは平成21年度のみ。ほぼ毎年のように50人以上の児童が虐待によって死亡するという実態がある。

 

児童虐待の課題と対策

発生と予防

○育児の孤立、不安を防止。養育者への支援

・乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)

・養育支援訪問事業

・集いの場

・相談所の増設

早期発見と早期対応

○少しでも虐待の形跡が見られたら、迷わず警察や相談所に連絡。連絡窓口の周知徹底。

・児童相談全国共通ダイヤル0570064000

・専門職員の増員と研修内容の充実

・子供救援地域ネットワークの確立と連携の強化

子供の支援・保護、保護者支援

○子供を守るための適切な一時保護体制の充実・強化

○親子再統合へ向けた保護者支援

○地域で見守る体制構築に向け、質と量を拡充する。

・地域ボランティアの活用

・適切なケアを行うための人員配置基準引き下げなどの見直し

・自立支援策の拡充

・親権に係る制度の適切な運用

 

(厚生労働省 『児童虐待対策の現状と今後の方向性』参照)

 

児童虐待は、家庭内だけの問題ではなく、児童養護施設でも起きている。しつけと称して暴力を振るい、愛情に飢えている子供たちにさらなる深い傷を負わせている。児童養護施設での体罰は禁止されているので、どんなことがあっても職員は子供たちに手を挙げることは許されない。

児童虐待で最も苦しんでいるのは子供たちであることは言うまでもない。しかし子供たちと同様、親や養育に携わる周囲の大人たちも実際にはかなり苦悩している。子供は家庭が中心となって養育すべきだが、地域や学校も含め、大人社会が責任をもって子供たちを明るい未来へと導いていく。そんな使命に一人一人が目覚めていく必要があるのではないか。

 

 

 

 □田中伸暁

政治・歴史・文化・社会問題を中心にライター活動しています