早期発見・早期通報で根絶! 児童虐待

田中伸暁


オレンジリボン運動ポスター 11月は児童虐待防止推進月間です
子供が危ない

人間というのは二種類しか存在しない。それは「親」と「子」。もちろん人間に限らずどんな生き物も基本はこの二つに分類される。しかし人間が他の生き物と決定的に違うところは、「親が子を虐待する」という生物学の掟を覆す現象に直面していることである。

 

子供を守る仕組み

年々増加傾向にある児童虐待。その一方で子供を守る体制は地道に整いつつある。

平成12年に施行された児童虐待防止法では、虐待の事実を確認した場合、すべての国民に通報を義務付けている。つまり、子どもが目の前で暴力を振るわれている光景を目の当たりにして、その現場を放置すればその人も虐待したのと同じ罪に問われる。法律的にも道徳的にも「見て見ぬ振り」は許されない。

 

子供優先という立場を持って

ひょっとしたら、むやみに通告などして「プライバシーの侵害になるのでは?」と危惧する向きもあるかもしれない。

しかし、児童虐待防止法では、「子供の命を守る」というのが最大の目的であり、法律の意義でもあるので、子供優先の観点から、少しでも虐待の疑いがあればまずは関係機関に連絡、というのが第一優先である。その場合誰が通報したのかは秘匿にされ、医師や学校の先生も守秘義務違反にはならない。

「子供を守る」という周りの大人たちの強い決意と態度、眼差しが子供と、親の未来を救うのである。

 

埼玉県の取り組み

また、周囲から一報を受けて、その後どう迅速に動くかといった初動態勢の仕組みも大切だ。

埼玉県の児童相談所では、虐待の通告を受けた場合、通告を受けてから48時間以内に子供の安全確保に努めている。平成11年から始まった埼玉県のこの取り組みを、厚生労働省が平成19年に全国の指針として示し、「48時間運動」はいたるところの自治体に広がっている。

 

埼玉県のオレンジリボン運動

市民活動として、「オレンジリボン運動」がある。

平成169月に栃木県小山市で二人の幼い兄弟が虐待を受けて亡くなった。橋の上から川に投げ捨てられるという悲惨な事件だった。その事件をきっかけに、小山市のボランティアサークル「カンガルーOYAMA」という団体が提唱した運動がこの「オレンジリボン運動」である。

オレンジ色は、里子さんたちが希望の色として選んでくれたそうだ。明るさと温かさを感じさせるそのリボンは、虐待に苦しむ子供たちに優しいメッセージを送る役目も果たしている。

二度とこのような悲しい事件が起きないようにと、明るいオレンジ色のリボンをシンボルとして、子供たちが受けている虐待の現状を広く知ってもらおうと啓発運動に取り組んでいる。

埼玉県もまた、県民にオレンジリボンの運動の周知を図り、子供たちに降りかかる不幸をゼロにする願いを込めて、この運動を進めている。

 

オレンジリボン運動公式サイト

 

埼玉県の通告状況

平成26年度調査の児童虐待通告受付件数

・平成15年度 1814

・平成16年度 2143

・平成17年度 2135

・平成18年度 2287

・平成19年度 2425

・平成20年度 2657

・平成21年度 2665

・平成22年度 3449

・平成23年度 4504

・平成24年度 4769

・平成25年度 5358

・平成26年度 7028

 

児童虐待の防止に先進的な取り組みをしてきた埼玉県でさえ、平成26年度には7000件を超える児童虐待の事実があった。通報が増えたからといって子供たちへの虐待が根絶できるわけではないというむなしい実態がこのデータで現れている。

しかし前向きに考えれば、監視体制の強化によってそれだけ子供たちの命を救っていると評価してもいい。

 

親もまた悩んでいる

この問題で苦しんでいるのは子供だけではない。親や養育者も救済すべき対象である。

こんな状況で、悩んでいる親は多い。

・子育ての仕方が分からない

・子供がいうことを聞かず、イライラする

・悪いと分かっていながら、つい怒鳴ったり、手をあげたりしてしまう

・仕事や人間関係など、子育て以外にもストレスは多い

・子育てに関して、誰に相談すればいいか分からない……など

 

親のこのような悩みは虐待へのシグナルでもある。子育てに関して何等かの悩みがある人は迷わず自治体に相談してほしい。そして、一人で悩んでいたり、様子がおかしかったりする親を見つけた周囲の人は、市町村や児童相談所に連絡することを忘れないでほしい。

 

虐待かな? と思ったらここに連絡

以上述べてきた通り、ちょっとでも虐待の可能性、またはその兆候があれば、周囲の大人は迷わず以下の相談窓口に通報してほしい。

・都道府県の福祉課

・市区町村の福祉課

・児童相談所

・保健センター

・学校、幼稚園、保育園

・警察

・病院

・子供の虐待防止センター0353002990

 

自分が子供だったら、親だったら……。と想像力を働かせて、国民みんなの力でこの不条理な現象を撲滅しよう。

 

 

 

□田中伸暁

政治・歴史・文化・社会問題を中心にライター活動しています

Twitter castlems91  

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