社会福祉行政における国と地方自治体

斉藤みちる


さいたま市南区役所の入っている複合公益施設「サウスピア」
さいたま市南区役所の入っている複合公益施設「サウスピア」

 

社会福祉における公的主体としての国と地方自治体の関係はどのようなものか。ここでは両者の関係を考えてみます。

 

地方分権改革

1999(平成11)年の「地方分権の推進を図るための関係法律 の整備等に関する法律(地方分権一括法)」による地方自治法改正前には、国と地方自治体の関係は、中央集権的なもので、上下・主従の関係だったといえます。

 

それは地方自治体の事務の分類から見て取れます。改正前には、地方自治体の事務は、いわゆる機関委任事務と自治事務(団体事務)に代別することができました。機関委任事務とは、地方自治体の機関が国または他の地方自治体などの機関として事務を行うもの。機関委任事務は、都道府県の機関が行う事務の大半を占め、市町村でも事務の3~4割を占めていたと考えられる。

 

機関委任事務は、委任した国、または他の地方自治体の事務であって、実際に事務を行う地方公共団体の事務ではありませんでした。国の機関委任事務を行う際には、位置づけとして、地方自治体の長なども、国の下級行政機関とされ、主任大臣の包括的な指導監督権に服してきた経緯があります。

 

自治事務に対しては、地方議会の条例制定権をはじめ地方議会の関与が認められていた一方で、機関委任事務に対しては、地方議会の地方議会の条例制定権が及びませんでした。(法令の委任に基づく委任条例の場合を除く)。機関委任事務では、地方自治体は国の施策を実施するための出先機関と変わらなかったといえます。

 

地方分権改革においては、国と地方自治体のこのような上下・主従の関係から対等・協力の関係へ改めることが目指されました。そのために、地方分権一括法による地方自治法改正で、それまでの事務の分類が改められ、機関委任事務は廃止されることとなりました。

 

自治事務と法定受託事務

地方自治法の改正後は、地方自治体の事務は自治事務と法定受託事務に再編されました。

 

自治事務は「地方公共団体が処理する事務のうち、法廷受託事務以外のものをいう」(地方自治法2条8項)とされます。改正前の地方自治法における自治事務は、地方自治体の本来の目的の事務である公共事務(固有事務)、国または、他の各広域自治体からの委任に基づく団体委任事務、及び権力的事務に値する行政事務の3区分がなされていました。

 

しかし、この事務区分は区分する実益がないとする見解が一般的であったことから、現行の地方自治法では従前の3区分は廃止されています。自治事務は、その定義からわかるように法的受託事務の定義から考えなければなりません。

 

法的受託事務を定義する地方自治法2条9項では、1号と2号に分けて規定が置かれています。「法律またはこれに基づく政令により都道府県、市町村または特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法令またはこれに基づく政令に特に定めるもの」である第1号法定受託事務と、「法律またはこれに基づく政令により市町村または特別区が処理することとされる事務にのうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであって、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に定めるもの」とされる第2号法廷受託事務です。すなわち、第1号法定受託事務は、国から都道府県、市町村に処理させる事務であり、第2号法定受託事務は、都道府県から市町村に処理させる事務です。

 

法定受託事務は、これまでの団体委任事務とは異なり、国等の事務が委託によって地方自治体の事務になったものではなく、あくまで地方自治体の事務です。地方自治体の条例制定権は、自治事務と法定受託事務の両方について及ぶこととなりました。

 

社会福祉の領域では、地方分権推進計画が示す指標によれば、「生存に関わるナショナル・ミニマムを確保し、全国一律に公平・平等に行う給付金等に関する事務」や「全国単一の制度として、国が拠出を求め運営する保険及び給付金の支給等に関する事務」は、概して法定受託事務とされ、生活保護法における保護の決定・実施に係る事務などがそれに該当します。多くの事務は、地方公共団体が住民のニーズに柔軟な対応を可能なものとするため自治事務となっています。この自治事務と法定受託事務の2区分は、次にみる国の地方自治体に対する関与の点で意味を持ちます。

 

地方自治体に対する国の関与

機関委任事務制度の下では、地方自治体は国の各省庁の省令や通達により助言、指導が行われていましたが、これまで中央集権型の行政システムの、中核的部分を形づくってきた機関委任事務廃止後の地方自治法においては、地方自治体に対する国の関与は、地方自治法245条の2が「普通地方公共団体は、その事務の処理に関し、法律またはこれに基づく政令によらなければ、普通地方公共団体に対する国または都道府県の関与を受け、または要することとされることはない」として、関与の法定主義を明確にしています。これにより、省令や通達を根拠にした関与がなされたとしても、地方自治体にはそれに従う必要はなくなりました。

 

国による関与の累計は同法245条が規定しています。まず、同条1号に「助言または勧告」、「資料の提出の要求」、「是正の要求(普通地方公共団体の事務の処理が法令の規定に違反しているときまたは著しく適性を欠き、かつ明らかに公益を害しているときに当該普通地方公共団体に対して行われる当該違反の是正または改善のため必要な措置を講じなければならないものをいう)」、「同意」、「許可、認可または承認」、「指示」、「代執行(普通地方公共団体の事務の処理が法令の規定に違反しているときまたは当該普通地方公共団体がその事務の処理を怠っているときに、その是正のための処置を当該普通地方公共団体に代わって行うことをいう)」という基本的な類型が列挙され、同条2号で「普通地方公共団体との協議」が、同条3号で「前2号に掲げる行為のほか、一定の行政目的を実現するため普通地方公共団体に対して具体的かつ個別的に関わる行為」が規定されています。

 

同法245条3第2項以下で、自治事務と法定受託事務それぞれに対する関与の基本類型及び例外的な関与の類型が明確化されています。すなわち、自治事務においては、「助言または勧告」、「資料の提出の要求」、「是正の要求」及び「協議」が基本類型となり、「同意」、許可、認可または承認」、「指示」及び「代執行」は例外的な関与とされます。法定受託事務においては、「助言または勧告」、資料の提出の要求」、「同意」、「許可、認可または承認」、「指示」、代執行及び「協議」が基本類型となります。

 

このようなルールに従い、地方自治体の行う事務に対して国の関与がなされるのでありますが、この関与を適正なものとするために、総務省に国地方係争処理委員会(次に説明します)が置かれています(地方自治法250条の7)。さらに、不服がある場合には、違法な国の関与の取り消し、または当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。(地方自治法251条の5)

 

※国地方係争処理委員会とは、地方公共団体に対する国の関与について国と地方公共団体間の間に立ち、公平・中立に調整を図ることを目的に、総務省に置かれる合議制の第三者機関(審議会)です。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn