社会福祉における行政機関の役割分担

斉藤みちる


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社会福祉行政は、国、都道府県、市町村の分担・協力によって運営されています。国、都道府県、市町村の行政機関は、法令に基づいて社会福祉の施策を実施しています。

 

1990(平成2)年の老人福祉法八法の改正(次に説明します)以降、社会福祉行政上の責任と権限は、市町村が多くを受け持つことになり、これまでの中央集権的な「上下・主従関係」から「対等・協力関係」へと移行することとなりました。介護保険制度においても、市町村ごとの裁量と自主性が大幅に認められています。

 

※老人福祉法八法改正とは、社会福祉をめぐる情勢の変化に対応した福祉改革を実行するため、厚生省(当時)は1989(平成元)年4月以降、法律改正作業を行った。その結果、1990(平成2)年4月に関係八法が改正されたもの。八法とは、福祉六法のうち生活保護法を除く5法と、社会福祉事業法(現・社会福祉法)、老人保健法(現・高齢者の医療の確保に関する法律)、社会福祉・医療事業団法(現・独立行政法人福祉医療機構法)である。

 

従来日本では、戦前・戦後を通じて長い間、機関委任事務制度によって、国の強い統制の下で、国の下請け機関としての地方自治体の長などが社会福祉を実施するという社会福祉行政の構造となっていました。地方分権一括法の制定以降、機関委任事務制度が廃止され、地方自治体の事務が自治事務と法定受託事務とに区分され、いまでは、生活保護法や福祉関係手当法を除いて、ほとんどの社会福祉に関する事務が地方自治体の自治事務とされています。

 

こうして、社会福祉サービスの実施責任が地方自治体に委託され、地方自治体の権限と責任で実施すべき自治事務の範囲が相対的に拡大されてきています。

 

国と地方自治体の役割分担

社会福祉行政における国と地方自治体の役割分担については、基本的な構図として、国が社会福祉の制度・施策を企画・立案し、都道府県が連絡調整・指導し、市町村がサービスを実施するというものになります。その実施を支えている負担金や補助金についても、国から都道府県を経て市町村に分配されています。社会福祉行政の実施体制を考えるにあたっては、この企画・指導と財政という2本の流れに着目することが重要になります。

 

社会福祉行政における国の役割は、社会福祉サービスの水準を確保してサービスの開発を進めることにあります。ですから、その主要な業務は、①外交や防衛などの国際社会における国家としての存立に関わる事務、②全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動もしくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務③全国的な規模・視点に立って行う必要のある施策および事業の実施などに限定されており、まさに国が本来果たすべき役割を重点的に担うことになりました(地方自治法1条の2)。

 

これに対して、住民に身近な行政は出来るだけ地方自治体に委ねることになり、地方自治体はその自主性・自立性を十分に発揮して、住民の福祉を増進するため、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うことが明確にされました。多くの具体的な社会福祉行政実務は、住民の生活に密接な行政機関である地方自治体に委任されています。

 

とはいうものの、生活保護法の法定委託事務のみならず、介護保険制度などをみても、地方公共団体だけに一方的に経費を負担させるのは適当ではなく、国も地方自治体の社会福祉行政の実施にあたって広範囲に財政負担を行う必要があります。

 

国と地方自治体の財政上の負担区分については、地方財政法に規定され、国庫負担は社会福祉関係法とこれに基づく政令で定めされています。社会福祉の運営において、地方自治体は直接住民に社会福祉の金品を給付したり、福祉サービス事業者に経費を支払っていて、国は地方自治体に補助するという方法で財政を支出しています。

 

社会福祉の実施体制の概要 図
出典 社会福祉シリーズ10福祉行財政と福祉計画[第3版]P13

 

社会福祉行政の実施体制においては、国・都道府県・市町村という三層構造になっています。住民にとって最も身近な地方自治体である市町村が実際にサービス提供に責任を持つ役割を担い、都道府県が児童相談所や婦人相談所などの各種相談所の業務などを通じて市町村を支援し、国が法律や制度の企画・運営によって全体をまとめているという役割分担となります。

 

都道府県と市町村の役割分担

 社会福祉行政における地方自治体は、住民に身近な行政機関であり、保育所の経営、介護保険制度の運営、在宅サービス提供、社会福祉法人に対する指導監督などのさまざまな業務を行っています。

 

地方自治法が定める(普通)地方公共団体には、広域的な地方自治体としての都道府県と基礎的な地方自治体としての市町村があります。地方分権一括法の制定に伴う地方自治法改正によって、都道府県と市町村との役割分担について新たな変化がみられます。

 

都道府県は、市町村を包括する広域の地方自治体として、その掌握事務については、①広域にわたる事務(広域的事務、道路や河川の整備に関する事務等)、②市町村に関する連絡調整に関した事務(連絡調整事務)、③その規模や性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められる事務(補完的事務、病院などの大規模公共施設の設置・管理等)の3つに限定されています。

 

一方、市町村は、住民に最も身近な地方自治体として、都道府県が処理するものを除いて事務処理を行うとされ、住民の日常生活に直結する事務処理を幅広く包括的に行うことになります。

 

都道府県と市町村においては、地方優先、市町村優先の原則が明確化されています。また、都道府県の任務とされる事務であっても、各市町村の規模や能力に応じて、市町村において処理し得ることが明らかにされています。したがって、住民の日常生活に直結する事務処理のうち能力的に対応できる事務処理は、市町村が担うことになります。

 

財政面では、市町村が地域住民の生活に直結したサービスの提供や、金品給付を行うという直接的機能を担い、都道府県は市町村の支援やサービスなどの基盤整備を行うという間接的機能を担っています。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn