社会福祉法政における事業者に対する指導監督

斉藤みちる


指導監督 イメージ

 

社会福祉法政における民間社会福祉事業者に対する行政指導監督の中心は、社会福祉事業の経営主体である社会福祉法人に対するものとされています。

 

都道府県の重要な役割のひとつに「事業者に対する指導監督」があります。民間の社会福祉事業者に対する行政監督については、一般に「予防的監督」、「監視的監督」、「是正的監督」の3つに分類されます。これらの行政監督は①社会福祉法の規定によって、社会福祉法人やその他の社会福祉事業を営む者に対する包括的な指導監督を可能にしつつ、②社会福祉に関する個別法で、法の目的の達成に向けた指導監督に関わる規定を置くことによって、社会福祉法と個別法とで、二重の行政監督構造を形成し、相互に補完する法的構造となっています。

 

以下、都道府県の役割という観点から、主として民間の社会福祉事業者に対する指導監督について解説します。

 

予防的監督

予防的監督とは、法律に反するような事故の発生などを未然に防止するための監督のことです。これは、社会福祉事業のうち重要なものについては、一般の事業者の参入を禁止し、特定条件を満たしたものについてのみ参入を認め、あるいは参入に際し事前の許認可を得ることを求め、または事業開始に先立って届出を義務づけるなど事業の開始以前に行う監督です。

 

たとえば、社会福祉法では、社会福祉事業を第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業とに分け、第一種社会福祉事業にあっては、原則として国・地方自治体・社会福祉法人が担うものとし、第一種社会福祉事業への民間営利企業の参入は認められていません。

 

社会福祉法人の設立には、原則として都道府県知事による認可が必要とされます。よって、都道府県知事は予防的監督として事業の公共性などを事前に判断できるとされます。

 

さらに、国・地方自治体・社会福祉法人以外のものが行う第一種社会福祉事業に関しては、都道府県知事の許可やその許可に係る条件の付与などを規定することによって事前監督を強化しています。

 

こうした社会福祉法人の設立認可のほかに、予防的監督には、社会福祉法人の解散・合併などに関する事前監督、社会福祉施設の設置認可・事前届出などもあります。予防的監督の実効性を確保するために、社会福祉法には罰則規定などが設けられています。

 

監視的監督

監視的監督は、関係法令や法人の定款などの遵守状況などについて確認することを基本的機能として行われるもので、広範にわたる調査・監視が行えます。社会福祉事業を開始した後では、最も幅広い機動的な指揮監督といえます。

 

社会福祉事業が法令や法人の定款などに違反していないか、あるいはすでに求められた改善事項などについて是正がなされているかどうかなど要是正事項の存否・程度・存在状況について調査・確認するとともに、次に行う是正的監督のための事前調査また確認機能をもちます。

 

主要なものとして、社会福祉法上、都道府県知事は、社会福祉法人に対して、業務や会計状況に関して報告を徴し、または職員により社会福祉法人の業務や財産の状況を検査する権限を有しています。また、社会福祉法人のみならず、広く社会福祉事業を営む者に対し、法の目的を達成するため、都道府県知事は必要と認める事項の報告を求め、ないし施設や帳簿などの検査や事業経営の状況を調査することができます。監視的監督の円滑な実施と、その効果を確保するため、罰則などが設けられています。

 

また、児童福祉法、障害者総合支援法、老人福祉法、生活保護法などの個別法にも、立ち入り検査についての規定があり、その中には罰則によって立ち入り検査の実効性を担保しているものもあります。

 

是正的監督

是正的監督は、現に有する違法な状態を排除し、社会福祉事業の適法正を回復させるため、必要応じて当該法人などの事業の停止や廃止を強制し、さらにその実効性を確保するために、加罰の手続きを行うなど極めて権力性の強い指揮監督です。

 

社会福祉法人の運営が著しく適性を欠くなどした場合、都道府県知事は、期限を定めて必要な措置をとるべき旨を命じますが(措置命令)、これに従わないときは、業務の全部または一部の停止を命じ、または役員の解雇を勧告することができます。

 

さらに、このような段階的介入を経ても指導監督の目的を達することができないとき、または正当な理由がないのに1年以上にわたり、法人がその目的の事業を行わない場合には、社会福祉法人法の行う公益事業・収益事業の停止を命じることができます(業務停止命令)。

 

なお、是正的監督の多くは、非常に優越的な行政介入であるため、その発動には慎重な判断が必要とされます。

 

是正的勧告の事例

平成25年度に社会福祉法政下での社会福祉法人や施設の適正な運営確保を目的として、健康福祉局により297法人・施設に対して指導監査が行われ、1,716件の改善指導が行われました。

 

主な改善指導の内容として、役員、評議員の選任手続、理事会開催の要件等の不備に関するものや決算の誤りや監事監査が不十分なもの、会計処理の不備に関するものなどがありました。

 

たとえば、「社会福祉法人 朝日の里」では 退職金保険については、法人が制定した管理職生命退職金保険規程に合致していない現金支払いが見受けられました。そこで、支払いの可否について理事会などでの決定を経て是正するという点や、退職金保険の対象者についても明確にすることなどを、当該社会福祉法人の管理職生命退職金保険規程旧会計基準第3条を根拠として指摘が行われました。

 

また、法人支出となっている保険に関する保険料について、保険金返戻金や対象者に対する支払いといった収支について、法人の会計処理が確認できないため、是正することも併せて指摘されました。このケースは既に改善済みとなっています。

 

「社会福祉法人 朋友会」では定款準則第9条について、定款細則上の不備と、社会福祉法人会計基準への移行時の取扱い1(1)・会計基準第1章第2運用指針2(2)について、新会計基準へ移行上の経理規程未作成について手順の誤りがあったため是正が行われました。

 

「社会福祉法人 くるみ会」のケースでは、契約予定金額が経理規程に定められた金額を超える案件は、原則競争入札の手続きによるという点について、モデル経理規程第56条、57条、58条社援施第7号1(3)を根拠にした指摘が行われました。随意契約による契約業者選定には、合理的な理由を稟議書等で明確にする必要性がありました。

 

また、契約金額が100万円を超える場合には、原則、契約書作成が必要となるといったモデル経理規程第59条についても指摘され、いずれも改善が図られました。

 

「社会福祉法人 緑成会」では、理事会での議決について、評議員会の前の理事会の開催を行っておらず、事前に評議員会の意見を聴くことなく理事会での議決を行われており、定款準則第12条備考1などを根拠に是正が図られました。

 

社会福祉法人 寿では、定款準則第8条、法人審査要領第3-(6)を根拠に、役員報酬規程に定められた金額を超えた理事長への役員報酬の支払いについての是正に関する私的が行われました。また、規程中の支給額改正については、算出根拠を明確にした上で、理事会での審議が必要となり、この点についても既に改善済みとなっています。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn