社会福祉費用と財源の動向を図と表で確認する

斉藤みちる


社会保障財源を考えるねこ

 

社会福祉の財源を考えるうえで、まずは、社会福祉にどれほどの費用がかかっているのかという現状を理解する必要があります。社会保障給付費という観点から、社会保障という大きな枠の中で社会福祉に用いられている金額を見ていきましょう。

 

現状の社会保障給付費

ILO(国際労働機関)が定めた基準に基づいて、公的な社会保障制度における1年間の給付総額を示す社会保障給付費の現状を示したものが、表4-です。また、図4-ILO基準における社会保障財源と社会保障給付のイメージ図となります。

 

2012(平成24)年度の社会保障給付費の総額は108兆5,568億円、国民一人当たり85万1,300円で、対前年比の伸び率は1.0%、対国民所得比は30.92%でした。

 

部門別(部門別社会保障給付費)では多い順に、①年金(厚生年金、国民年金などの公的年金、恩給及び労災保険の年金給付など)が53兆9,861億円(49.7%)、②医療(生活保護の医療扶助、医療保険、老人保健の医療給付、労災保険の医療扶助、結核、精神その他の公費負担医療、保健所等が行う公衆衛生サービスにかかる費用など)が34兆6,230億円(31.9%)、③福祉その他(医療保険の傷病手当金、労災保険の休業補償給付、雇用保険の失業給付、児童手当等の各種手当、社会福祉サービスや介護対策にかかる費用、生活保護の医療扶助以外の各種扶助)が19兆9,476億円(18.4%)となっています。

 

ただし、社会保障給付費の部門別にはそれぞれ多様な経費が含まれている点に留意したうえで、社会保障の給付の現状を把握することが望ましいといえます。

 

また、図4-からは、社会保障の財源と各社会保障制度などの関連の全体像が把握できるでしょう。

表4-1部門別社会保障給付費
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P50
図4-1 ILO基準における社会保障財源と社会保障給付のイメージ図
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P51
社会保障給付費の動向

図4-は、社会保障給付費の推移が示されています。社会保障給付費の総額は、

昭和45年に3.5兆円、

昭和55年に24.8兆円、

平成2年に47.2兆円、

平成12年に78.1兆円、

平成26年には115.2兆円と増加してきています。

 

他に、社会保障給付費の対国民所得比では、1999(平成11)年以降20%を超える高い水準となっています。

 

更に、部門別の社会保障給付費の推移では、年金の占める割合が一貫して増大しています。しかし、2000(平成12)年4月の介護保険制度創設後、「福祉その他」の割合が増大し、今後は表4-の「社会保障給付費の見通し」が示すように、「福祉その他」とともに、「医療」の占める割合が増大する見通しになっています。

 

このように、社会福祉の財源である社会保障に向けられる費用が今後も巨額の費用がかかることが想定される中、その財源をいかに確保すべきかについて、国や地方自治体といった全体としても、また各施設としても、真摯な検討を加えられるべき時期にきていると言えるでしょう。たとえば、現行の年金に対する課税は非課税枠が大きすぎるとの指摘もあり、所得の高い高齢者を中心に課税方式を見直すことも考えられます。

 

表4-2 社会保障給付費の見通し
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P52
図4-2 社会保障給付費の推移
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P52
社会保障財源の概要

表4-は、2011(平成23)年度と2012(平成24)年度の項目別社会保障財源を示したものです。

 

2012年度の社会保障財源の総額は127兆555億円で対前年比の伸び率は9.9%増加しました。

 

項目別割合では、社会保険料が48.3%、他の収入が18.2%となっています。大別すると社会保険に関連した制度には保険料が充てられ、社会福祉には税金を財源とする国や地方自治体の負担金にあたる公費が充てられているといえますが、社会保障の各制度には保険料も公費もその財源そされることがあることに留意する必要があるでしょう。たとえば、介護保険における給付費負担割合は、保険料が50%となっています。

 

公費は、国と地方それぞれが負担することから、国の財源、地方自治体の財源に対し考察することが肝要といえるでしょう。

表4-3 項目別社会保障財源
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P53
社会保障と税の一体改革

少子高齢化にともない、年金や医療、介護などの社会保障費用は、毎年急激に増加しており、現在では国・地方の財政の大きな部分を占めています。その一方で、財政の成熟化によってかつてのような高い経済成長率が望めなくなったことから、税収は歳出に対して大幅に不足しており、社会保障費の急増に伴う財源不足等、厳しい状況になっています。そのひとつの対応策として検討されてきたのが「社会保障と税の一体改革」です。

 

この改革は、政府の2008(平成20)年「社会保障国民会議」、2009(平成21)年「安心社会実現会議」が閣議決定され、2012(平成24)年には「社会保障・税一体改革大綱」が閣議決定されました。同年、社会保障制度改革推進法、税制抜本改革法等の関連法案が可決・成立されましたが、この大綱に基づいたものでした。

 

社会保障制度改革推進法に基づいて設置された社会保障制度改革国民会議にて、社会保障制度の基本方針等が議論され、2013(平成25)年に報告書がまとめられています。同年、この報告書等を踏まえ、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(社会保障改革プログラム法)」が成立し、施工されました。

 

社会保障と税の一体改革は、社会保障の安定財源確保と財政健全化を図るものです。そこで、この改革では、安定的な財源であり高い財源調達力があるなど、社会保障の財源としてふさわしいとされる消費税の増税が主たる財源とされています。

 

また、従来の消費税収(国分)が、年金・高齢者医療・介護の高齢者3経費に充てられていたのに対し、この改革は全世代対応型の社会保障を目指し、子育て・現役世代医療を加えた社会保障4経費(年金・医療・介護・少子化)に消費税増収分の全てが充てられることになりました。

 

2012(平成24)年の税制抜本改革法に基づき、2014(平成26)年4月に消費税率が8%へと引上げられましたが、図4-にあるように、税制抜本改革法に基づき消費税率が10%に引上げられる際には、約14兆円の増収が見込まれ、そのうち社会保障の安定化のために4%(11.3兆円)、社会保障の充実に1%(2.8兆円)が充てられます。社会保障の安定化分11.3兆円の使途は基礎年金国庫負担割合2分の1の恒久化に3.2兆円、消費税率引上げへの対応として0.8兆円、将来世代への負担の先送り軽減に7.3兆円が充てられるものとされています。

 

また、図4-では、社会保障の充実分2.8兆円の使途を表しています。今後は、社会保障改革プログラム法により設置された、内閣総理大臣及び関係閣僚により構成される社会保障制度改革推進会議が中心となって、社会保障制度の今後のあり方について検討が進められていくこととされています。

 

図4-3 社会保障の安定財源確保
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P54
図4-4 社会保障・税一体改革による社会保障の充実
出典 社会福祉士シリーズ10福祉行財政と福祉計画 P55
コラム

社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとするために必要な財源をいかに安定的に確保していくのかという問題に対して、消費税率の引き上げ、あるいは消費税の目的化によって対応してはどうかという議論が、政府や国会においてなされていますが、3回の増税の結果、消費水準が下がって現在に至ります。

 

近年、米帝だけではなく日本でも格差が広がると訴える人が現れてきましたが、何も変わっていません。悪い方へ動いてる状況が何も変わらないのです。このまま、また消費増税・法人減税をやりますと、さらに前に進んでしまうわけですよね。これはかなり危機的な状況だと認識するべきだと思います。 

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn