地域社会福祉の各財源の枠組み

斉藤みちる


税金など財源

 

社会福祉事業に対しては、社会福祉法や各社会福祉関係法(母子及び父子並びに寡婦福祉法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、生活保護法)の他に、地方自治法、地方交付税法、地方財政法などの規定に基づいてその財源が講じられ、①地方分権の推進を社会福祉行政の観点から見るや、地方分権一括法の制定と社会福祉行政改革地域分権一括法以降の改革などで見てきた租税を財源とする公費、②利用者負担の2つに大きく別けることができます。

 

地域福祉の公的な財源

公的な財源は国からの補助金のほか、地方自治体が管理している公的基金や独立行政法人が管理している基金なども含まれます。

 

■補助金、地方交付税交付金等

補助金とは、国や地方自治体が、それ以外のものが行う特定事業の実施や育成・支援、奨励を目的に歳出されるものをいい、それぞれの事業内容などによって、(国)10分の10、2分の1、3分の1、(都道府県)2分の1、3分の1(市町村)3分の1など、国及び地方自治体が負担する割合が定められています。地域福祉に関係する補助金は、主に社会福祉費から歳出されていて、補助金は、公共団体・企業・私人などに交付されています。

 

補助金以外の地域福祉の財源として、地方交付税交付金によるものもあります。地方交付税交付金は、地方自治体の財政格差を是正することでそれぞれの地方自治体が計画に基づいた適切な運営を行うため国から交付されるもので、財政保障機能と財政調整機能があります。

 

この地方交付税交付金は、補助金と違い使用目的が限定されていないため、地方自治体の裁量によってその使途を決めることができる財源です。1991年には、地域福祉推進特別対策事業と地域福祉基金の設置への歳出が地方交付税交付金により行われています。

 

また、地方自治体が自主財源で特別事業などを実施することが困難な場合、特別交付税が交付されることとなっています。

 

■地域福祉関係の公的基金

・地域福祉基金

地域福祉基金は地域の実態に則した福祉活動を展開していくことを可能にするため、1991年度の自治事務次官・厚生事務次官通知「高齢者保健福祉推進特別事業について」によって創設された基金です。地方自治体がこの基金を設置する場合に、地方交付税交付金による財政措置が行われたため、全都道府県と、ほとんどの市町村に地域福祉基金が設置されました。地域福祉基金への財政措置は、1991年度から1993年度までの3年間行われ、総額9600億円にのぼる大規模な財政措置がとられました。その内容を見ていくと、都道府県に2100億円、市町村に7500億円が配分されており、全体の75%が地域福祉推進の中核的な役割を果たす市町村に配分されています。

 

地方自治体は基金の運用益によって、在宅福祉サービスへの支援やボランティア活動の推進、福祉団体などへの支援を行ってきました。

 

・ボランティア基金

ボランティア基金は、1985年から始まったボラントピア事業を契機として全国的に広まり、ボランティア活動を財源面から支援していくことを目的としています。

 

主に、社会福祉協議会に設置されており、地方自治体からの出資金や一般市民・地域の各種団体・企業などからの寄付金を元に基金を作り、その運用益をボランティア活動への支援にしています。

 

具体的には、先駆的・開発的な事業や人材育成のための学習・研修活動への支援、ボランティア団体への支援、広報活動に必要な器材を購入する際の助成、ボランティア保険の掛け金の一部助成などに対し資金を提供していくことで、ボランティア活動の基盤を整備しています。

 

・長寿・子育て・障害者基金

急速な少子高齢化の日本社会のなかで求められてくる、先駆的な活動や地域に根ざした活動を支援していくために、政府からの出資金により創設され、独立行政法人福祉医療機構が運営する「子育て支援基金」「長寿社会福祉基金」「高齢者・障害者福祉基金」「障害者スポーツ支援基金」があります。

 

利用者負担

利用者負担は、サービス費用の一定割合を負担する定率負担と一定額を負担する定額負担、利用者の負担能力に応じて負担する応能負担と受益に応じて負担する応益負担などに分類されます。

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表 社会福祉施設の利用契約制度と措置制度別概要
社会福祉施設の利用契約制度と措置制度別概要を表にしたもの。
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上記表は、社会福祉施設の利用契約制度をまとめたものです。措置制度の下でも、本人またはその扶養義務者から、その負担能力に応じ、その費用の全部または一部を徴収することができるものと規定される(児童福祉法56条など)。

 

介護保険における利用者負担は、65歳以上の被保険者のうち、本人の合計所得金額が160万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で280万円以上、2人以上の場合346万円以上の場合に2割負担で、その他の場合は1割負担とされます。在宅サービスの場合、認定された要介護度に応じて支給限度額が定められており、支給限度額を超えた部分は、原則全額自己負担となります。

 

重ねて、施設サービスの場合、定率1割負担に加え、住居費・食費が原則自己負担となります。けれども、負担額が月に一定額を超えた場合に、超えた分が介護保険から償還されることとされます。

 

支援費制度における利用者負担は、サービス利用の多少にかかわらず、サービス利用者及びその扶養義務者の所得に応じた負担額(応能負担)となっています。

 

障害者総合支援法における利用者負担は、サービスの利用料に応じた負担を原則としつつ、所得に応じた負担上限を設定(定率負担を原則としながら、応能負担の考えを取り組む)しています。

 

保険料

2000(平成12)年4月より実施された介護保険法では、老人福祉事業に公費負担を組み入れた社会保険方式を導入し、負担と給付の関係を明確にしています。

 

介護保険の被保険者は、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者を第1号被保険者とし、市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者を第2号保険者に区分しています。第1号被保険者の保険料は、所得に応じた定額の段階設定になっており、徴収は市町村で行います。第2号被保険者の保険料は、加入する医療保険の算定ルールに従い決定されることとなっています。職場の健康保険に加入している被用者であれば、事業主負担があり、国民健康保険に加入している者であれば、国庫負担があります。徴収は、医療保険者が医療保険料の保険料に上乗せして徴収し、社会保険診療報酬支払基金を通して介護保険の保険者である市町村に支払われます。

 

介護サービスを利用すると、利用者は原則としてその費用の1割を負担します。残りの9割は保険給付されます。この介護費用から利用者負担を差し引いたものを給付費といいます。介護給付費の財源構成は、50%が国、県、市町村からの公費で、50%が被保険者からの保険料(内訳:第1号被保険者20%、第2号被保険者30%)となっています。

 

民間財源その他

■共同募金

地域福祉推進のための大きな民間財源として共同募金があり、社会福祉法112条によれば「都道府県の区域を単位として、毎年1回、厚生労働大臣の定める期間内に限ってあまねく行う寄附金の募集であって、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄付金をその区域内において地域福祉事業、更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く)に配分することを目的とするものをいう」とされています。

 

共同募金を行う事業者は、第一種社会福祉事業者であり、共同募金会と称される社会福祉法人によって行われます(同法113条)。募金実績は、近年減少傾向にあるものの、毎年200億円程度の額にのぼっていて、社会福祉事業に果たす役割は大きいといえます。

 

図 共同募金実績額・目標額の推移
出典http://www.akaihane.or.jp/about/history/pdf/toukei_rekinen_bokin01_150529.pdf

 

■助成団体による助成

日本には社団法人及び財団法人が25000あり、このうち「助成・給付」を行うものが4508法人あります。福祉分野ではこの他にも「清水基金」や「木下財団」のような社会福祉法人立の団体もあり、社会福祉活動への助成が行われています。これらの助成団体は、主に企業や企業の創立者個人などの出資金により設立されており、調査・研究・研修事業、先駆的事業や地域における福祉活動、福祉施設整備・機器費用等の購入、福祉車両の購入等に対し、団体それぞれの方針に基づく多種多様な助成が行われています。また、助成方法には応募資格を問わない一般公募や法人側が助成先を選定する非公募のものまであります。

 

■お年玉つき年賀葉書寄附金

郵便事業株式会社は、「お年玉付郵便葉書等に関する法律」に基づき、寄付金を郵便に関する料金に加算した額の郵便葉書または郵便切手(お年玉付郵便葉書など)を発行することができます。その寄附金は、社会福祉の増進を目的とする事業等、同法5条2項の各号に掲げる事業を行う団体の当該事業の実施に必要な費用に充てることを寄付目的とするものでなければならないとされます。寄附金を配分する団体及び団体ごとの配分すべき額は、郵便事業株式会社が決定するものとされています(同法7条)。

 

■独立行政法人福祉医療機構貸付資金

2003(平成15)年に特殊法人等改革により、社会福祉・医療事業団の事業を継続して設立された独立行政法人福祉医療機構は、社会福祉事業施設及び病院、診療所等の設置などに必要な資金の融通ならびにこれらの施設に関する経営指導、社会福祉事業に関する必要な助成、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の運営、心身障害者扶養保険事業等を行い、それをもって福祉の増進ならびに医療の普及及び向上を図ることを目的としています(独立行政法人福祉医療機構法3条)。

 

社会福祉事業施設に対しては、国や地方自治体により整備費の補助が行われますが、設置者である社会福祉法人にも一定割合の負担が求められます。この自己負担分に対して福祉医療機構が必要な資金を融通することにより福祉の増進を図っています。

 

■公営競技団体による助成

公営競技のうち、競輪とオートレースにおいては、それぞれ自転車競技法23条、小型自動車競走法27条に基づき競輪振興法人・小型自動車振興法人の指定を受けた公益財団法人JKAによって、体育事業その他の公益の増進を目的とする事業(体育、文京・環境、非常災害の援護、医療・公衆衛生、社会福祉、地域復興)の振興のため事業補助が行われています。また、モーターボート競走においては、モーターボート競走法44条に基づき船舶等振興機関の指定を受けた公益財団法人日本財団によって、地域の福祉、教育や文化の発展の支援が行われています。

 

「公益財団法人中央競馬馬主社会福祉財団(競馬)」は、社会福祉事業その他の公益事業に対する助成が行われています。

 

■収益事業

社会福祉法人は、社会福祉法26条により、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(公益事業という)またはその収益を社会福祉事業もしくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業(収益事業という)を行うことができるものとされます。ただし、社会福祉法人の設立の際に、定款において事業の種類を定めたうえで、所轄庁の認可を受けなければならない(同法31条)。そのほか、公益事業または収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければなりません(同法26条2項)。

 

■地域通貨

近年、住民が互いに助け合えるシステムを構築していく取り組みが全国的に広がっています。「地域通貨」は住民の相互扶助の形成に重点を置いた相互扶助型と地域経済の活性化に重点を置いた地域経済活性化型などがあり、提供したサービスや物品の管理方法として、①通帳方式、②紙券方式、③チップ方式、④借用書方式があります。

 

相互扶助型では、住民が持っている知識や技能、才能、時間などを持ち寄り、必要な人に提供していくことで、地域での継続した暮らしが営めるように取り組まれています。運営は地域内のNPO法人格を持った団体、グループなどによって行われ、時間を交換単位としてサービスのやり取りを行い、紙券や通帳方式で管理している場合が多く見られます。

 

国と地方の財政から財源の枠組みを知る

社会福祉事業に対しては、社会福祉法や各社会福祉関係法(母子並びに寡婦福祉法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、生活保護法)の他に、地方自治法、地方財政法、地方交付税法などの規定に基づいてその財源が講じられています。

 

■国の財政

国や地方自治体は、租税などの収入手段により、資金を調達し、予算を組んで福祉などのサービス提供活動を行っています。この活動を経済面から捉えたものが「財政」と呼ばれ、ここでは、国の財政を見てみましょう。

 

国の予算は、社会保障、教育、公共事業などの基本的経費に関する「一般会計」と、一般会計とは別に設けられ、独立した経理管理が行なわれる「特別会計」とに分かれています。社会保障給付費に対する国の負担分は、「社会保障関係費」として、一般会計に計上されています。

 

2015年度一般会計予算における歳出は約96兆円で、社会保障関係費が31兆1,297億円で、歳出全体の32.7%、一般歳出(次に説明します)の55.0%を占め、経費別では最も高い比率となっています。

 

※一般歳出とは、国の歳出から国債費と地方交付金を引いたものをいう。最も基本的な経費の収支を扱う会計だ。

 

また、社会保障関係費は増大傾向を示しており、今後も、高齢化の進展により社会保障給付費の増大は避けられないと予想され、国の財政事情は厳しくなるものとされます。

 

社会保障関係費は、年金医療介護保険給付費、生活保護費、社会福祉費、保健衛生対策費、雇用労災対策費の5つに分類されていますが、年金胃腸介護保険給付費が最も大きい割合を占め73.9%、生活保護費が9.6%、社会福祉費は14.6%、保健衛生対策費は1.3%、雇用労災対策費が0.6%となっています。

 

また、2014(平成26)年度の社会福祉費の内訳は、表4-の内訳に示したようになっています。なかでも保育所運営費は2008(平成20)年に3,276億円に増額されて以来、増加傾向にあり、4,581億円に達しています。障害者保健福祉費も総額1兆4,536億円になっています。これは、障害者施策の推進策の一環として、障害者の自立支援を図るためのものです。

 

表4-5 社会福祉費の内訳
出典 社会福祉シリーズ10 福祉行財政と福祉計画 P56

 

■地方財政

地方自治体の財政も国と同様一般会計と特別会計に分けて経理されています。2013(平成25)年度の歳出純計決算額は、97兆4,120億円になります。

 

地方自治体の一般会計の歳出は目的別に民生費、労働費、商工費、土木費、農林水産業費、教育費、警察費、消防費、衛生費、公債費、総務費などに分類されますが、社会福祉に関連した施策の経費である民生費は23兆4,633億円で、歳出総額の24.1%(都道府県15.0%、市町村34.3%)を占めています。表4-は、目的別歳出の構成比の推移を示していますが、民生費の構成比が上昇基調にあることが分かります。

 

団体種別に見た2013(平成25)年度の目的別歳出では、都道府県において、教育費が21.2%で、次いで民生費15.0%、公債費14.3%、土木費11.3%、商工費8.2%のようになっています。また、市町村においては、民生費が34.3%と最も大きな割合を占め、次いで総務費13.1%、土木費12.2%、公債費11.0%、教育費10.2%の順です。市町村において民生費の比率が高いのは、生活保護などの社会福祉事務の比重が高いことによります。

 

2013(平成25)年度の民生費の目的別歳出額内訳、図4-は、児童福祉費が民生費総額の30.6%を占めており、次いで老人福祉費24.1%、社会福祉費(知的障害者などの福祉対策や他の福祉に分類できない総合的な福祉対策に要する経費)24.1%、生活保護費16.9%、災害救助費4.3%となっています。

 

団体種類別にみた目的別の構成比は、都道府県においては、民生費総額7兆5,218億円のうち、児童福祉費が35.3%を占め、次いで社会福祉費23.6%、生活保護費19.9%、老人福祉費18.1%となっています。

 

図4-は、民生費の目的別歳出額の推移を示しています。近来、児童福祉費の占める割合が30%前後と最も大きく、また生活保護費の占める割合も17%戦後まで大きくなっています。

 

表4-6 目的別歳出純計決算額の構成比の推移
出典 社会福祉シリーズ10 福祉行財政と福祉計画 P60
図4-7 民生費の目的別歳出額の推移
出典 社会福祉シリーズ10 福祉行財政と福祉計画 P61

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn