社会福祉行政の組織及び団体の役割

斉藤みちる


 これまで日本で社会福祉において中心的な役割を果たしてきたのは、国と地方自治体などの公的機関や社会福祉協議会などの、準公的機関です。今や、ボランティア団体、NPOなどの民間組織や民間企業の活動も重要となっています。核家族化が相互扶助機能を 極度に弱めているなか、国民にとって社会福祉の役割、機能はますます重要になっています。

 

しかし、思わぬ落とし穴もあります。社会福祉サービスの提供は、介護保険制度の導入などにより、措置方式から保険方式へと移行がなされ、状況が大きく変わりつつあることに注意しなければなりません。また、このような指摘もあります。老人への介護が社会保険化されるとき、社会福祉の他の分野、すなわち児童、心身障害者などに対する介護や世話は措置制度に残されることになります。それは、理論的根拠があってのことではなく、老人介護の充実が社会的に切実な問題となったからに他なりません。老人介護の社会保険化にメリットがあるのならば、他の要介護者にこれを拒む理由は薄弱といえましょう。

 

本記事では社会福祉の組織について、国、地方自治体、民間の面から見ていきます。

 

社会福祉行政の組織の行政概要

社会福祉の実施体制は、さまざまな行政組織によって実施されています。それを示しているのが下図 社会福祉の実施体制の概要です。国は厚生労働省を中心にもっぱら社会福祉制度の企画、立案、監督などに当たっています。

 

具体的な福祉活動は、都道府県や市町村に置かれる機関によって担われています。婦人相談所、児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、福祉事務所などの専門機関も地方自治体に置かれ、福祉活動を担っています。

 

図 社会福祉の実施体制の概要
出典http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14-2/dl/08.pdf
国の行政組織

■厚生労働省

厚生労働省は国の社会福祉に関する行政組織の中枢の役割を果たしています。厚生労働省の設置・所掌事務などに関する法律の規定として「国家行政組織法」と「厚生労働省設置法」があります。

 

厚生労働省の職務は、厚生労働省設置法3条によると、国民生活の保障及び向上を図り、ならびに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進ならびに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることとされます。そして、その職務を達成するため、社会保障制度に関すること、社会福祉に関する事業の発達、改善及び調整に関することなどを所掌事務としています(同法4条)。

 

・社会・援護局及び障害保健福祉部

社会・援護局は、社会福祉法、生活保護法、民生委員法、災害救助法、社会福祉士及び介護福祉士法、その他の法律を所管施行しています。主な所掌事務は、組織令11条1項によると、社会福祉に関する基本的な政策の企画及び立案ならびに推進に関すること、社会福祉に関する事業の発達、改善及び調整に関すること、社会福祉士及び介護福祉士に関すること、障害者の福祉の増進に関すること、障害者の保険の向上に関すること、精神保健福祉士に関すること、地域における社会福祉の増進に関することなどとされています。

 

社会・援護局には、保護課、総務課、地域福祉課、福祉基盤課、援護企画課、業務課、援護・業務課の7課が置かれています(組織令100条1項)。

 

障害保健福祉部は、社会・援護局に置かれ、組織令11条2項によると主な所掌事務は、障害者の福祉の増進に関わること、障害者の保険の向上に関すること、精神保健福祉士に関すること、国民の精神的健康の増進に関すること、福祉用具の研究、開発及び普及の促進ならびに適切な利用の確保に関すること、障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等の保護及び自立の支援ならびに擁護者に対する支援に関すること、社会福祉に関する事業の発達、改善及び調整に関する事務のうち障害者の福祉に関することなどとされています。

 

障害者自立支援法、障害者基本法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、特別児童扶養手当等の支給に関する法律、その他の法律を障害保健福祉部は所管施行しています。

 

・老健局

老健局は、電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)によると、これまでに例のない高齢社会を迎える我が国において、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、介護保険制度(介護を必要とする状態になっても、できる限り自宅や地域で自立した日常生活を営むことができるよう、必要な介護サービスを提供する仕組み)をはじめとする高齢者介護・福祉施策を推進するとされています。

 

主な所掌事務は、組織令12条によると、老人の福祉の増進に関すること、老人の保険の向上に関すること、介護保険事業に関すること、老人の福祉及び保健ならびに介護保険に関する事業の発達、改善及び調整に関すること、福祉用具の研究、開発及び普及の促進ならびに適切な利用の確保に関すること、老人の福祉及び保健に関する事業の用途に提供する施設の整備に関することなどとされています。

 

老健局には、総務課、老人保健課、介護保険計画課、高齢者支援課、振興課の5課が置かれています(組織令112条)。

 

・雇用均等・児童家庭局

雇用均等・児童家庭局は厚生労働省の内部部局のひとつで、主な所掌事務は、組織令10条によると、育児または家族介護を行う労働者の福祉の増進その他の労働者の家族問題に関すること、児童の福祉に関する基本的な政策の企画及び立案ならびに推進に関すること、児童の心身の育成及び発達に関すること、児童の保育及び擁護その他児童の保護及び虐待の防止に関すること、児童の福祉のための文化の向上に関すること、児童の保険の向上に関すること、児童の福祉ならびに母子及び寡婦の福祉に関する事業の発達、改善及び調整に関することなどとされています。

 

雇用均等・児童家庭局には、総務課、母子保健課、家庭福祉課、育成環境課、保育課、雇用均等等政策課、職業家庭両立課、短時間・在宅労働課の8課が置かれています(組織令91条)。

 

■審議会その他

厚生労働省には、厚生労働大臣の諮問機関として審議会があり、社会保障審議会、疾病・障害認定審議会、その他があります。

 

また、厚生労働省の社会福祉関連の施設としては、組織令135条に基づき、国立児童自立支援施設(児童福祉法44条に規定する児童であって同法27条1項3号の措置を受けた者のうち、特に専門的な指導を要するものを入所させてその自立支援を行う。組織令145条)、国立障害者リハビリテーションセンター(紹介者のリハビリテーションに関し、相談に応じ、治療、訓練及び支援を行う。組織令149条)等が設けられています。

 

地方公共団体の行政組織

■都道府県・市区町村

都道府県の知事部局には、保健福祉部、生活福祉部など都道府県によって異なることがある名称が付された社会福祉関連の部局が置かれ(東京は福祉保健局)、その下に福祉政策課などの課が置かれ、社会福祉の事務を担当しています。また、婦人相談所、児童相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、福祉事務所が各都道府県知事の下に置かれています。

 

市町村及び特別区でも、市区町村の事務部局に社会福祉関連の部課が設けられていますが、指定都市と中核市は社会福祉に関しては、都道府県とほぼ同様の事務を担当することから、都道府県と同様の組織です。

 

社会福祉に関する事項を調査審議するため、地方社会福祉審議会が、都道府県、指定都市、中核市に置かれ、首長の監督に属し、その諮問に答え、または、関係行政長に意見を具申します(社会福祉法7条)。

 

また、都道府県には児童福祉に関する都道府県児童福祉審議会が置かれます。市区町村にも児童福祉審議会を置くことができます(児童福祉法8条)。

 

■福祉事務所

社会福祉行政の第一線の専門機関である福祉事務所は、社会福祉法第3章の「福祉に関する事務所」にあたります。同法14条によると、都道府県及び市(特別区を含む)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければなりません。町村は条例で、その区域を所管区域とする福祉に関する事務所を設置することができます。

 

都道府県の設置する福祉事務所は、児童福祉法及び母子及び父子並びに寡婦福祉法、生活保護法に定める援護または育成の措置に関する事務のうち、都道府県が処理することとされているものを所管します。市町村(特別区を含む)の設置する福祉事務所は、母子及び父子並びに寡婦福祉法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、生活保護法などに定める援護、育成または更生の措置に関する事務のうち市町村が処理することとされているもの(法令で定めるものを除く)を所管します。

 

図 社会福祉の実施体制の概要にあるように、福祉事務所総数は1,247ヵ所(2014(平成26)年4月現在)です。

 

■児童相談所

児童福祉行政の第一線の専門機関である児童相談所は、児童福祉法12条に基づき、都道府県に措置が義務づけられています。2013(平成25)年1月現在、全国に207ヵ所設置されています。

 

児童相談所の主な業務は、①市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供その他の必要な援助を行うこと及びこれらに付属する業務を行う、②児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応じる、③児童及びその過程につき、必要な調査ならびに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行う、④児童及びその保護者につき、③の調査または判定に基づいて必要な指導を行う、⑤児童の一時保護、その他です。いずれも児童及び助産婦の福祉に関する業務。

 

児童相談所は、必要に応じ、巡回して、業務を行うことができるものとされています。図5-は、児童相談所における相談援助活動の体系を示しています。

 

平成25年度の児童相談所への相談件数は、391,997件であり、相談の種類別では障害相談が最も多く、次いで擁護相談、育成相談の順となっています。

 

図5-2 児童相談所における相談援助活動の体系・展開
出典 社会福祉士シリーズ10 福祉行財政と福祉計画 P76

 

■身体障害者更生相談所

身体障害者福祉の専門機関である身体障害者更生相談所は、身体障害者福祉法11条に基づき、都道府県は、身体障害者の更生援護の利便のため、及び市町村の援護の適切な実施の支援のため、必要な地に身体障害者更生相談所を設けなければならないとされます。

 

その主な業務は、①市町村の援護の実施に関し、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うこと及びこれらに付随する業務を行う、②身体障害者に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を行う、③身体障害者の医学的、心理的及び機能的判定、その他です。いずれも、身体障害者の福祉に関する業務。

 

身体障害者更生相談所は、必要に応じ、巡回などの方法により、業務を行うことができます。

 

■知的障害者更生相談所

知的障害者福祉の専門機関である知的障害者更生相談所は、知的障害者福祉法12条に基づき、都道府県に設置が義務付けられています。

 

その業務は、①市町村の更生援護の実施に関し、市町村相互間の連絡及び調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うことならびにこれらに付随する業務を行う、②知的障害者に関する相談及び指導のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものを行う、③18歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行う、その他です。いずれも知的障害者の福祉に関する業務。

 

知的障害者更生相談所は、必要に応じ、巡回などの方法により、業務を行うことができます。

 

■婦人相談所

売春防止法に規定された専門機関である婦人相談所は、売春防止法34条に基づき、都道府県に設置が義務づけられています。

 

婦人相談所は、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある女子(以下、要保護女子)の保護更生に関する事項について、①要保護女子に関する各般の問題について相談に応じる、②要保護女子及びその家族に対して、必要な調査、医学的、心理学的及び機能的判定を行い必要な指導を行う、③要保護女子の一時保護を行う、その他が主たる業務とされてきました。

 

2002(平成14)年からは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律3条に基づき、配偶者暴力相談支援センターとしての機能も担う施設の一つとして位置付けられました。

 

■地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、介護保険法115条の46に基づき設置され、地域住民の心身の健康及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的にする施設のことです。

 

立ち位置としては、地域包括支援センターは、公正・中立な立場から、総合相談支援、虐待の早期発見・防止等の権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントの4つの機能を担う、「地域包括ケア」の中核機関とされています。

 

最近では、施設と地域との連携を強めることが重視され、地域包括支援センターの社会福祉士が援助に携わっています。

 

また、地域包括支援センターは、市町村あるいは老人介護支援センターの設置者その他の市町村から委託を受けた法人が設置することができます。(介護保険法115条の46、115条の47)

 

図 地域包括支援センター(地域包括ケアシステム)のイメージ
出典 新 社会福祉とは何か 大久保秀子著 P156
社会福祉の民間組織

■社会福祉法人

社会福祉法人は、社会福祉事業において重要な役割を果たしている民間団体であって、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法の定めるところにより設立された法人です(社会福祉法22条)。

 

社会福祉法人の設立については、定款を定め、厚生労働省令で定める手続きに従い、当該定款について所轄庁である都道府県知事(指定都市・中核市の市長)もしくは更生労働省大臣(事業が2つ以上の都道府県の区域にわたるもの)の認可を受けなければならない(社会福祉法31条・30条)。法人の設立以外にも、社会福祉法第6章の規定が適用されます。

 

■社会福祉協議会

社会福祉協議会は、2000(平成12)年に改正された社会福祉法のなかで規定されている組織です。市町村社会福祉協議会(指定都市では地区社会福祉協議会)は、1または同一都道府県内の2つ以上の市町村の区域内において、①社会福祉を目的とする事業の企画及び実施、②社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助、③社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成、④社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図ることを目的とする団体となっています(社会福祉法109条)。

 

都道府県社会福祉協議会は、都道府県の区域内において、①各市町村を通じる広域的な見地から行うことが適切な事業、②社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修、③社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導、助言、④市町村社会福祉協議会の相互の連絡及び事業の調整を行うことにより地域福祉の推進を図ることを目的とする団体です(社会福祉法110条)。

 

関係行政庁の職員は、市町村社会福祉協議会、地区社会福祉協議会及び都道府県社会福祉協議会の役員となることができます。ただし、役員の総数の5分の1を超えてはならないとされます(社会福祉法109条5項、110条2項)。

 

なお、ほとんどの社会福祉協議会が、社会福祉法人格を取得しています。

 

■その他の民間組織

他に、共同募金会、NPO法人(特定非営利活動法人)、ボランティア団体、営利企業、当事者組織などが、福祉活動に取り組んでいます。今後も、これらの組織の活動の重要性が増していくことが予想され、社会福祉を考える上で留意する必要があるものと思われます。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn