福祉行財政の動向 ~第二次安倍政権誕生からアベノミクス新三本の矢まで~

斉藤みちる


2015年9月24日、自民党総裁再選が正式決定し記者会見する安倍首相
2015年9月24日、自民党総裁再選が正式決定し記者会見する安倍首相 出典http://www.nikkei.com/article/DGXZZO92034300U5A920C1000000/
第二次安倍政権とアベノミクス

安倍晋三自民党総裁は2012(平成24)年12月、衆参両院本会議で第96代首相に選出され、自由民主党と公明党による自公連立政権を形成しています。

 

第二次安倍政権は、その主要な政策は、安倍首相の名前にちなんで「アベノミクス」と呼ばれています。これは(1)大胆な金融政策、(2)機動的な財政政策、(3)民間投資を喚起する成長戦略という「三本の矢」と呼ばれる経済政策によって構成されています。

 

このアベノミクスの中には、社会保障政策や福祉制作は含まれていません。そこでは、社会保障費の負担によって悪化した財政を立て直し、市場経済の活力を刺激して経済成長を実現することが主眼であり、その結果として年金、健康保険、介護保険等を中心とした社会保障制度の安定化が実現するとされていました。

 

そのような安倍政権化でも、女性・高齢者・障害者・若者の雇用促進は進められ、2014(平成26)年の雇用保険法改正では育児休業給付、教育訓練給付、再就職手当の拡充が行われました。また、非正規労働者の雇用条件改善のために、2015(平成27)年にはパートタイム労働法が施行されています。

 

新三本の矢

2015年9月24日、安倍晋三首相は『新本の矢』という名の新政策を掲げました。

 

新たな3本の矢は(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障の3項目。

 

ここでは、第の矢である「社会保障」を解説したい。

 

介護離職者が年間10万人を超えている現状を憂い、「介護離職ゼロ」という明確な旗を掲げました。そのため、介護施設の整備や介護人材の育成を進めることで、在宅介護の負担を軽減し、仕事と介護が両立できる社会づくりを本格スタートさせるとしています。

 

総務省の調査によると、前職を「介護・看護のため」に離職した者は、過去5年ごとの推移を見ると、

・1997年10月〜2002年9月:52万4千人

・2002年10月〜2007年9月:56万8千人

・2007年10月〜2012年9月:48万7千人

で、直近1年(2011年10月~2012年9月)では10万1千人となっています。

 

「介護離職者は年間10万人」と言われるのは、こうした調査結果によるものでありましょう。このうちの、約8割は女性です。

 

介護が必要な高齢者には、なるべく介護サービスがなされるべきではあります。しかし、介護保険制度の本質は、介護される高齢者のためというより、介護しなければならない高齢者を抱える家族の負担を軽減するためであるといえます。これを今一度、はっきりさせておく必要があると思います。

 

介護離職に係る問題は、高齢者福祉を維持するだけでなく、国全体の労働力を維持していくためにも、きちんと対処されるべきです。当面目指すべきは、「国民皆介護」の前に、「介護離職ゼロ化」でしょう。そう考えると、安倍首相の掲げたスローガンは、かなり的確だと言えるのかもしれません。

 

後、身内を介護する場合、“悲劇”が起こってしまうことがあります。介護疲れなどの理由から、介護している家族が、介護されている家族を殺してしまう、いわゆる「介護殺人」です。

 

高齢者が高齢者の介護を担う「老老介護」の割合が既に半数を超えていることも反映しているのか、警察庁の統計によると、殺人の動機として「介護・看病疲れ」であるものが、高齢者で約20%、高齢者以外の者で約3%となっています。これは、必ずしも介護離職者に係るものではないですが、あまりにも悲しいことであり、「家族介護は他人が入る事で丸く収まる」という介護保険制度の本旨に立ち返った支援策の強化が待たれます。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn