次世代育成支援への展開 | 児童福祉と仕事と生活の調和(ワークライフバランス)| 子育てしやすい働き方へ

斉藤みちる


父子家庭が家庭生活と両立できる労働環境の整備を

 

児童福祉とは、児童の権利を実現するための具体的方策や諸活動を意味します。

 

今日、家庭・家族のあり方は大きく変化し、子供の養育や高齢者の介護などを家庭内で完結することが難しくなっています。核家族化と少子化の進行、両親の就労、家族意識の変化などに加えて、情報化の進展にともなうコミュニケーション環境の変化や、地域社会における、人間関係の希薄化などもその要因として上げることができるでしょう。

 

続けて、次世代育成支援を解説して行きます。

 

次世代育成支援への展開

1990(平成2)年のいわゆる「1.57ショック」(次に説明します)以降、少子化の進行への危機感は高まり、さまざまな少子化対策が展開されていました。

 

※1.57ショックとは以下の事態のことを言う。それまでも低下が進んでいた合計特殊出生率が、1989(平成元)年に過去最低の1.57という数値を記録したことが1990(平成2)年に発表され、以後、政策的・社会的に少子化問題への関心が高まった。

 

1994(平成6)年12、文部・厚生・労働・建設の4大臣の合意により「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」と1990(平成11)年の見直しにより、策定された「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)(大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治の6大臣の合意)では、多様なニーズにこたえる保育サービスの拡充、子育て相談と支援体制、母子保健医療体制が柱とされました。

 

その後、児童福祉に留まらず、若者の自立支援までも視野に入れた「次世代育成」の根本的な取り組みが展開されました。

 

保育の拡充を中心とする計画から、若者が意欲をもって自立できるような支援や、男女がともに子育てに参加できる条件整備、児童虐待防止、子育てバリアフリーのまちづくりなど、幅広い内容へと拡充されるようになったのです。

 

2003(平成15)年には、「次世代育成支援対策推進法」は10年間の時限立法として、、また「少子化社会対策基本法」も成立しました。前者は「次世代の社会を担う子供が穏やかに生まれ、育成される社会の形成」を目的に、後者は「少子化に的確に対処するための施策を総合的に推進する」ために制定されました。

 

2004年(平成21)年までの5年間に講ずる施策内容と目標が、「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について(子ども・子育て応援プラン)」として策定されました。

 

2006(平成18)年の「新しい少子化対策について」においては、生命を受け継ぐ価値や、家族の重視を理念として、社会全体の意識改革と施策の拡充をめざしました。

 

続いて、2007(平成19年)、家庭生活と両立できる労働環境の整備を目的として「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針が制定されました。

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすものです。他方で、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしに欠かすことができないものです。しかし、現実には、安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない。仕事に追われ、心身の疲労から健康を害する。仕事と子育てや親の介護との両立に悩むなど、仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られます。

 

これらが、働く人々の将来への不安や、豊かさが実感できない大きな要因となっており、社会の活力の低下や少子化・人口減少という現象にまで繋がっているといえます。それを解決する取組が、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現です。仕事と生活の調和の実現は、そなたたち国民一人ひとりが望む生き方ができる社会の、実現にとって必要不可欠です。

 

仕事と生活の調和実現の状況と課題

・目標達成しているもの

「20歳から64歳までの就業率」

・目標達成していないもの

「25歳から44歳までの女性の就業率」、「フリーターの数」、「労働時間等の課題について労使が話し合いの機会を設けている割合」、「年次有給休暇取得率」、「メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合」、「短時間勤務を選択できる事業所の割合」、「保育等の子育てサービスを提供している数」、「男性の育児休業取得率」、「6歳未満の子供をもつ夫の育児・家事関連」などであって、その中でも特に厳しいものが「時間当たり労働生産性の伸び率」と自己啓発を行っている労働者の割合」と「第1子出産前後の女性の継続就業率」となっています。

 

仕事と生活の調和の実現に向けての現状分析と今後の課題

・就労による経済的自立

就業率はどの年齢においても、のきなみ上昇傾向にあります。また、「非正規雇用の雇用者全体に対する割合」は、男女共に長期的には高まっており、男女別では、2010年以降、男性は約2割、女性は5割を超えておおむね横ばいで推移しています。

 

パートタイム労働などの非正規雇用は、多様な就業ニーズに応えるという積極的な意義もある一方、やむをえず選択している者(不本意非正規)も一定程度います。このため、均

等・均衡待遇の取組や正社員への転換に向けた取組の推進を図る必要があります。また、公正な処遇が図られた多様な働き方の普及・推進を図っていくことが求められます。

 

・健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

2009年には年間総実労働時間が、一般労働者とパート労働者ともに大幅に減少し、その後は緩やかな増加傾向でしたが、2013年、2014年ともに前年と比べると

減少し、一般労働者は横ばい、パートタイム労働者は減少傾向にあります。

 

週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、2011年から連続して低下しています。これを業種別に見ると、「運輸業、郵便業」、「建設業」が高い傾向が見られます。

 

年次有給休暇取得率は、2000年以降は50%を下回る水準で推移しています。これを企業規模別に見ると、企業規模が大きいほど取得率が高くなっています。また、業種別に見ると、2014年は「宿泊業・飲食サービス業」、「複合サービス事業」、「卸売業、小売

業」などで取得率が4割を下回っています。

 

長時間労働の抑制や、希望する人の年次有給休暇取得促進に向けては、労使における、意識の改革や職場の雰囲気づくりに取り組む必要があります。また、経営者の主導の下、時間の節約と仕事の質を評価する仕組みの構築や仕事を代替できる体制づくりなどの雇用管理の改善が重要です。また、長時間労働の状況は業種によって違いが大きいため、業種に応じた重点的な取組とその支援が必要です。

 

さらに、年次有給休暇取得率は、企業規模によって違いが大きいことや、計画的付与制度を有する企業の方が取得率が高い傾向にあることから、企業規模に応じた取組や、年次有給休暇の「計画的付与制度」の一層の普及・促進を図ることが必要となります。

 

・多様な働き方・生き方が選択できる社会

第1子出産前後の女性の継続就業率は、4割弱で推移し、長期的にほぼ横ばいで推移しています(図表9)。これを職員とパート・派遣等に分けて見ると、正規の職員は就業を継続している者の割合が5割を超えていますが、パート・派遣は就業を継続する者の割合が2割に達していません。

 

第1子出産前後の女性の継続就業率 仕事と調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2015より
仕事と調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2015より

 

女性の就業継続に向けて、いわゆるマタニティハラスメントなど、従業員の「妊娠等を理由とする不利益取扱い」等に関し、防止策(業務上の支援や職場研修など)に取り組んでいる事業所の方が、取組を行っていない事業所に比べて、「妊娠等を理由とする不利益取り扱い」の経験率が低くなっています。

 

妊娠等を理由とする不利益取り扱いの経験率は、取り組んでいない事業所では20.5%であるのに対して、いずれかに取り組んでいる事業所では17.5%となっています。

 

なお、男性の育児休業取得率は、わずか約2%(2013年)と非常に低い水準で推移しています。

 

今後の課題としては、男女がともに仕事と子育てを両立できる環境の整備に向けて、育児休業、短時間勤務やテレワークなどの、多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備が必要です。その際、増加傾向にある非正規雇用の労働者についても、多様で柔軟な働き方を可能とする制度の利用促進を図ることが重要です。

 

また、男性が仕事と育児を両立するためには、育児を積極的にする男性「イクメン」の普及など職場や男性を取り巻く人たちを含め、男性の働き方や意識の改革を進めることが必要です。

 

仕事と介護の両立に関しては、高齢化が一層進行することが見込まれる中、多様で柔軟な働き方ができる環境の整備や、社会全体で高齢者介護を支える仕組みやその周知が必要です。

 

あわせて、男女がともに仕事と子育てを両立し、その責任を担うためには、子育ての社会基盤の整備が必要です。この他、女性が就業を継続していくためには、女性がキャリアを活かして様々な職域・職階で活躍できる環境整備も必要です。

 

重点取組み

当面重点的に取り組むべき事項は、「非正規雇用の労働者等の経済的自立支援とセーフティ・ネットの強化」、「若年者の就労・定着支援」、「働きながら学びやすい社会環境の構築」さらに、「仕事の進め方の効率化の促進、長時間労働の抑制に向けた取組など」の健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会づくり。さらに、「仕事と子育て等の両立支援」及び「仕事と介護の両立支援」などとなっています。

 

2020年の目標数値に向けた進捗状況に遅れがみられる指標については、その改善を図るため、労使はもとより、各主体の取組を支援する国や地方公共団体においても、明らかとなった課題への対応について検討し、仕事と生活の調和の実現に向けた取組をさらに加速していくことが望まれます。

 

子ども・子育て関連三法の成立

2010(平成22)年には、「子ども・子育てビジョン」が閣議決定され、併せて消費税率の引き上げを含む社会保障と税の一体改革が推進されることになりました。しかし、政治情勢の混迷のもとで、子ども手当や総合こども園の構想は実現しないままに終わり、2012(平成24)年、新たに「子ども・子育て関連三法」(次に説明します)が成立しました。

 

※子ども・子育て関連三法は、①子ども・子育て支援法、②就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律(認定こども園法の一部改正法)③子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(子ども・子育て支援法等の施行に伴う関係法律整備法)の3つの法律。

 

まとめ

精力的な施策展開の過程で、保育に留まらず地域の子育て力の向上や、社会的養護の充実、子育てしやすい働き方への企業の取り組みにも及ぶ包括的な支援が進められたことの成果は、必ず現れるでしょう。

 

少子化が社会の根幹を揺るがす事態であるとしても、次の事項には、留意する必要があるでしょう。

(1)子共にとっての幸せの視点で

子共の数だけを問題にするのではなく、子共が心身ともに健やかに育つための支援という観点で取り組むこと。

(2)産む産まないは個人の選択

子共を産むか産まないかは個人の選択に委ねるべきことであり、子共を持つ意志のない人、子共を産みたくても産めない人を心理的に追い詰めることになってはならないこと。

(3)多様な家庭の形態や生き方に配慮

共働き家庭や片働き家庭、ひとり親家庭、LGBTカップルなど多様な形態の家庭が存在していることや、結婚するしない、子共を持つ持たない、産む産まないの決定については、様々な議論があり多様な生き方を尊重すること。

 

かといって個人主義に偏らず、強い家族をめざしながらも、人間らしさの回復や個人の自由と責任を認識しなおす契機となるよう、今後も革新的施策が実行に移されることが望まれます。

 

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn