リンの「新しい優生学」を人類遺伝学の学徒が読み解いてみた

斉藤みちる


理想的な人類

 

昨今、これだけ医療技術が進歩してくると、遺伝子技術や生殖技術は、「優生学」という汚名を着せられぬようにナイーブになるかもしれませんね。

 

ほとんどの先進諸国において、伝統的に繰り返されてきた遺伝子の再生産パターンを見てみれば、ヒトの認知的能力の劣化を心配してパニックに陥る必要はありません。とはいっても、人間の進歩の研究を止めるのはナンセンスであり、新たな優生学として我々は享受した方がよいでしょう。

 

IQの低下が世代間連鎖する?

リン(Lynn,b.)は、合衆国やイギリスの現在の劣性学的な出生率が継続すれば、1世代につきIQが0.80ポイントずつ低下するだろうと推定しています。

 

ただし、この推定は、環境的要因と遺伝的要因が区別されていないので、彼はこの値に0.71を掛けて補正しています(彼の遺伝率の推定値は細かい)。

 

したがって、0.80×0.71=0.57となり、1世代につき0.57ポイント弱のIQ低下が見込まれることになります。

 

一方日本では、このIQ低下は起こるのでしょうか。

 

所得と「子供を持つ割合」

ネットには、このような意見がありました。

 

「ヤンキーは20代で子供を産むが、最近のエリートは子にエリートを目指してもらえる環境が整う30代後半まで子供を持たないから、このままいくとエリート2世代の間にヤンキーが3世代増えて日本はヤンキーに支配されるぞ」

出典https://twitter.com/curious_Aoba/status/803599135978835968

 

つまり、DQNの方が結婚が早く子共をポンポン産むということ、世間に浸透している見解です。

 

DQNが必ずしも低所得者だとは申しませんが、ここで所得別に見た「子供がいる割合」を見て行きましょう。

 

図 年収400万円未満の世帯において、子どものいない世帯の占める割合「妻年齢40~49歳における世帯収入層別子どもの数割合」
出典http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/10_pdf/01_honpen/pdf/hm020100.pdf#search=%27%E2%80%9D%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E8%A6%81%E8%AB%8B%E2%80%9D+%E6%89%80%E5%BE%97%E5%88%A5%27

 

第2-1-9図は、2003年の「妻年齢40~49歳における世帯収入層別子供の数割合」を示しています。所得の多い少ないは、出産行動にどう影響しているのでしょうか。

 

世帯収入と子共の数との関係を見るために、ここでは、子共を産み終わったと考えられる、妻の年齢が40~49歳の世帯をクローズアップしています。

 

見てみると、年収1,000万円以上の層で子共のいない、あるいは子共一人の世帯の割合が高くなっていますが、子共のいない世帯の割合が一番高くなっているのは、年収400万円未満の低所得の世帯となっています。つまり、一定の経済力を下回ると子共に使う経済的負担感が高まり、子共を持ちにくくなると考えられます。

 

常識が覆るかもしれませんが、ここでは、DQNはポンポン産むという従来の認識とは異なり、DQNには子供が少ないと出ていました。

 

なぜ子供を良く産むイメージがあるか考えてみると、子供を4人以上産む確率が他の層と比べて一番高いことがイメージに影響しているのかもしれません。

 

このように日本では、合衆国やイギリスのように、下層階級が上流階級よりも子供を多く持つというような切迫した状況ではないことが分かりました。しかし、国民をより優秀にする試みは、国家間の競争でもあり、手を緩めることは出来るものではありません。

 

つづきまして、新しい優生学としての避妊法を提案していきます。

 

新しい優生学

『優生学――再評価』(2001)において、リンは「新しい優生学」と呼ぶ有望な方法を検討しています。それには2つの提案が含まれていますが、片方はすべての階級に避妊法を普及させるというものです。私なりの解釈を述べます。

 

まず、「下層階級と道徳心のない女性に避妊法を普及させよう」というのがリンの提案です。ジェームズ・R・フリンも、「私は特に異論はない。なぜなら彼らは、他の階級と比べて、特に子供を欲しがっているわけではないから」と述べています。

 

そこで「優しい優生学」を日本に応用するなら避妊法に関しては、思春期の段階で、すべての女性は妊娠する権利を放棄してもいいのではないかと、もしどうしても妊娠したいならば、何らかの方法を用いなければならないようにするとどうでしょう。

 

もし、自分の妊娠を自分で計画せざるを得ないようになれば、おそらく計画的な人の方が、無計画な人よりも有利になると思われます。そうすることによって、無計画な妊娠が一夜にしてなくなり。計画的な妊娠をする社会へと転換するでしょう。

 

すでに皮膚下に挿入して5年間避妊効果を継続することができるノルプラントⅡ(NorplantⅡ)という避妊薬が開発されています。この避妊薬は、日本では認可されていませんが、いつでも取りはずせ(避妊薬によって引き起こされた)プロゲスティンの流入を止めることができます。また、5年経過後に更新も可能となっています。

 

近い将来、科学の進歩によって、すべての女性(または男性)の生殖力を一時的になくすための、もっと安全で効果的な避妊法が開発されるかもしれません。

 

妊娠の「予防接種」の動機

すべての子供が妊娠しないための「予防接種」を受けるようにする動機とはいかなるものでしょうか。この点についての予測は難しいですが、思春期がどんどん早まっていることが可能性として上げられるかもしれません。

 

日本でも、子共の身体的成長や生理的成熟が早まっていることは、誰もが感じとっているはずです。現に、今の子共の身長・体重は年々その平均値が各年齢ごとに高くなっていて、全体として以前より早く身長が最大に達していることを裏付けるデータが、ベネッセでまとめられています(図表1)。

 

図表 男女児童の身長の伸び率の比較
出典http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2006_07/fea_abiko_02.html

 

理想的には、すべての子供たちがさまざまな疾病に対して予防接種をするように、妊娠しないための予防接種をすることです。

 

予防接種が無理なら、すべての子供に避妊具を使用できるようにし、カウンセリングを行うことです。そのための場所として、ヨーロッパでは理髪店が使われているようです。

 

日本でも、女の子が気軽に立ち寄りやすい美容室の近くに助言を与えたリ避妊法について教えたりするカウンセラーを設置するとよいでしょう。

 

さらに期待されるのが、中絶せずに、出産する子供の質を向上させるための、産婦人科医療技術の普及です。

 

産婦人科医療技術の発展

中絶に関しては、遺伝的な疾病や障害に加えてダウン症候群の胎児の出生前診断が可能であり、これらの産婦人科医療技術は、ほぼどこでも利用できます。生まれてくる子供の質を向上させることに関しては、遺伝子工学、クローン化を含めた試験管内受精のような、選別ドナーによる人工授精技術が、進歩しています。

 

これらの技術がすべての人々にとって実用可能となれば多くの親たちが高い知性の健康な遺伝子によって交配された子供を持つことを選択することになるでしょう。

 

まとめ

いままで新しい優生学について述べてきました。しかしながら、一党独裁政権の方が民主主義政権よりも、これらの新しい優生学を活用する可能性は高いでしょう。

 

次の世紀にかけて、IQの上下、認知的能力など、何が起こるのか私は楽しみであります。

 

 

 

出典

http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2006_07/fea_abiko_02.html

知能と人間の進歩 遺伝子に秘められた人類の可能性 ジェームズ・R・フリン著 P6163

http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/10_pdf/01_honpen/pdf/hm020100.pdf#search=%27%E2%80%9D%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E8%A6%81%E8%AB%8B%E2%80%9D+%E6%89%80%E5%BE%97%E5%88%A5%27

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn

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