「ライフデザイン教育」が少子化日本を救う

斉藤みちる


ライフデザイン教育を受ける生徒 イメージ

 

「若者の恋愛離れ」が指摘されて久しくなります。それが結果、「結婚したくない若者」になって、非婚化の流れになっているそうです。それを食い止める特効薬が「ライフデザイン教育」です。

 

もちろん正社員で雇って、30代で360万から400万の年収を与えましょうとかいうのが一番なのは確かですが、今回は別のアプローチから提案します。

 

若者の結婚観

 

若者の結婚観がわかる注目の調査2つをご紹介したいと思います。ひとつは、明治安田生活福祉研究所の昨年の調査。

 

20代の独身男女のうち、結婚したい人の割合が3年前と比べて、男性で28ポイント、女性で23ポイントと大幅に減少しました。

 

「できるだけ早く結婚したい」「いずれ結婚したい」との回答が、男性で67.1%から38.7%に、女性は82.2%から59%に減少しています。また、30代では男性が40.3%、女性は45.7%でいずれも10%以上減少しました。

 

もうひとつは、独立行政法人・国立青少年教振興機構の調査。

 

「結婚したくない」と考える20代男性は2015年度は2割を超えて、08年度の2倍近くに増える一方、女性は「早く結婚したい」と「結婚したくない」の割合がいずれも増えて(各25.5%)、二極化が進んだとされています。

 

なお、「子供は欲しくない」という20代の男女も倍増し、21.9%でした。

 

ライフデザイン教育のコンセプト

こうした結婚願望の「内的な理由」に対するひとつの有効な対策が、「ライフデザイン(人生設計)教育」にほかなりません。

 

少子化対策の一環として、ライフデザイン教育の必要性を早くから提言してきた松田茂樹教授は、その理由と目的をこう述べています。

 

「若年層の未婚化の主因は雇用の劣化であるが、消費生活に価値をおき、責任も伴う結婚・出産に価値をおかなくなったことも一因であると指摘されている。それは雇用環境や生活環境が大きく変化しているために、若者たちは自分の働き方や結婚・出産について将来ビジョンを持てなくなっていることも関係している。

若者たちに、学校教育段階において、学校を卒業した後にどのような働き方をするか、結婚や出産のタイミング、結婚後の生活、結婚・出産するには仕事を含めてどうしたらよいかなどを学び、自らのライフデザインを考えることが大切である」(『少子化論』)

 

つまり、仕事や結婚・出産・子育てについて、若者自らが主体的に人生設計を考えられるようになるための情報や体験を提供するのがライフデザイン教育なのです。

 

たとえば、近年、少子化の影響で、赤ちゃんに接する機会がなく、将来の子供との関わりに不安を抱く若者も少なくありません。そんな不安を解消するために、幼児と触れ合う機会を与えることも、ライフデザイン教育の重要な柱となるでしょう。赤ちゃんの力を借りた、いわば実物教育です。

 

もちろん、ライフデザイン教育は、結婚や出産を強制しようとするものではありません。あくまで結婚や出産に必要な情報や体験を提供するのが、ライフデザイン教育の目的なのです。

 

注目の事例と成果

ライフデザイン教育の重要性については、少子化社会対策基本法に基づき、2015(平成27)年に策定された「少子化社会対策大綱」も、「結婚、妊娠・出産、子育て、仕事を含めた将来のライフデザインを希望どおり描けるようにするためには、その前提となる知識・情報を適切な時期に知ることが重要」と説いています。

 

こうした国の方針もあってライフデザイン教育に取り組む自治体も増えつつあります。ここでは2つの事例をご紹介いたします。

 

まず、山形県では、講演とワークショップを柱とする高校生のライフでザインセミナーを平成25年から行っています。その狙いのひとつは、妊娠適齢期についての正しい知識を伝えることで、妊娠・出産を含めた自分の望む人生を送ることができるような人生設計について考える機会を持つことだとされています。

 

26年度は8校から888名が参加しました。セミナー前後の参加者の変化を調べたところ、結婚・出産への意欲の上昇が確認されたといいます。

 

また、参加前は妊娠適齢期を知らなかったり、誤った知識を持つ生徒が多かったが、参加後は全生徒が正しい知識を習得したとされます(145名が参加したある高校は、セミナー前は「妊娠適齢期を知らない」生徒が125名もいたという)。

 

参加した高校生からは、「年齢が高くなると子供を授かりにくくなることがわかったので、結婚・出産の時期をしっかり考えたい」、「結婚を含め、何ごとも受身でいるのではなく、自分から意識的に活動することが大切だとわかった」などの感想が寄せられています。

 

次に、岡山県総社市による中高生対象の「赤ちゃん登校日事業」をご紹介いたします。

 

妊娠・出産に関する助産師の講話と赤ちゃんとの触れ合い体験を中心とするもので、孤立しがちな育児中の親たち、日常的に赤ちゃんにあまり触れることのない中高生の双方に対して、出産・妊娠・育児・子育てについての生の情報と、ふれあい・交流機会を提供することが事業の特徴です。

 

助産師の講話に対しては、「一人ひとりが生まれてきたことの奇跡を感じ、自分自身を大切にしたいと感じた子育ての苦労を聞き、育ててくれた親に対して感謝の気持ちで一杯になった」、「積極的に育児にも協力し、家族の誰からも信頼されるような父親になりたい」といった感想が寄せられました。

 

赤ちゃんとの触れ合いに対しては、「普段小さな子と接する機会がないので、楽しかったし可愛かった。赤ちゃんは意外に重くてびっくりした」、「おうちの人が笑ってにこにこしていると、赤ちゃんも自然と笑顔になっているなと思いました」などの声が寄せられました。

 

さらに、赤ちゃんの保護者からも「親子ともに良い経験ができた。0歳にして社会に貢献できると思うとすごい」、「(自分が)学生の時にこのような取組みがあれば良かった」などの感想や意見があったといいます。

 

以上からも、ライフデザイン教育が、若者の「家族形成力」の強化に大いに資することがわかるのではないでしょうか。

 

ライフデザイン教育は、若者の非婚化を食い止める「特効薬」であり、希望出生率1.8を実現するための「決めて」との思いを強くしました。

 

まとめ

ここで注意を促したいのは、こうしたライフデザイン教育の先進事例は、決して突出した自治体の取組みではないことです。というのも、そもそも家庭科の学習指導要領にはライフデザイン教育と重なるような趣旨が盛り込まれているからです。

 

それだけに、現下の人口急減に本気で歯止めをかけようとしている政府には、発達段階に応じたライフデザイン教育を学校教育に、まずは家庭科の授業に導入することを強く要請したいところです。

 

 

 

出典

明日への選択 平成293 P1822

 

 

 斉藤みちる プロフィール

社会活動家/「みんなの社会科」管理人

その傍らオラクルカードを中心とした占いもしております。ヒット記事『陸上自衛隊レンジャー訓練』。福祉力検定3級。

Twitter @tikyuuhattenn